モリちゃんの酒中日記 8月その1

8月某日
図書館で借りた「物書同心居眠り紋蔵シリーズ」の「敵討ちか主殺しか」(佐藤雅美 講談社 2017年6月)を読む。巻末のシリーズ紹介のページによると本作は15作目。佐藤雅美のシリーズものの中でも人気のシリーズなのだろう。江戸時代の町奉行は警察と司法を兼ねていた。主人公の紋蔵は過去の判例を調べる「例繰り方」である。今まで時代小説やテレビで取り上げられたのは、刑事事件の捜査を主とする「町方」同心。江戸時代も幕末に近い文化文政のころが舞台。商品経済も行きわたり、江戸文化が爛熟したころ。丁寧な時代考証はいつもの佐藤雅美の小説である。

8月某日
社保研ティラーレ主催で年3回実施している「地方から考える社会保障フォーラム」の検討会を会社近くの「むさし坊」で。社保研ティラーレの吉高会長と佐藤社長、社会保険研究所の松沢総務部長、水野君、清水君が出席。社会保険研究所グループとして「社会保険」という枠にとどまらず、社会保障全体に目配りする必要があるのではないかと話す。我孫子に帰って駅前の「愛花」に顔を出す。常連のカヨちゃんとアライさんがいた。

8月某日
今日、明日と休み。久しぶりに被災地を訪ねてみようと思い常磐線で「いわき」へ。急ぐ旅でもないので各駅停車を乗り継いでいったら3時間以上かかってしまった。「いわき」から津波の被害が一番ひどかった「四ツ倉」に行こうと思ったが、次の列車まで1時間以上時間があるので「いわき」の駅前へ。駅前の商業ビルの4階と5階が市立図書館になっているので寄ってみる。ずいぶん立派な図書館だ。東日本大震災のコーナーも常設されているので立ち寄る。四倉町2丁目には7.55mの津波が押し寄せ、いわき市全体で400名近い死者、行方不明者が出たことがわかる。震災関係の図書も揃えられていて、「福島が日本を超える日」(浜矩子他、かもがわ出版、2016年3月)を読んでいたら時間が来たので再び駅へ。2つ目の「四ツ倉」駅で下車。何度か訪れたことがある四ツ倉海岸沿いの「道の駅」へ。ここら辺は野菜や果物、海産物が豊富、昆布となめこなどを買う。2階の喫茶室で生ビール。目の前が海水浴場になっているので行ってみると女子高生と思しきグループがビーチバレーに興じていた。サーフボードを抱えた青年も見かけたが平日からか閑散とした印象だ。駅への帰りに「大川魚店」で弁当を買う。帰りの電車でビールの肴にするつもり。駅前のスーパーで家族の土産に福島産の桃を買う。
「四ツ倉」から乗った電車は水戸行きだったので「いわき」で降りずにそのまま乗車。車中で弁当を食いながらビールを吞む。日立で特急に乗り換えることができるので下車。特急券を買おうとしたらちょうど日立から東京へ帰るサラリーマンで券売機の前には長い列が。結局、目当ての特急には乗れず、勝田まで各駅停車で行くと柏に停車する特急に乗ることができるのでその特急券を購入。駅の特産物コーナーをのぞくとNHKの朝の連ドラ「ひよっこ」の展示がされていた。主人公の「みね子」が生まれ育ったのは茨城県北部の架空の村、奥茨城村。だもんで県北の日立市や常陸大宮市、高萩市などで茨城県北「ひよっこ」推進協議会を結成、PRに努めているのだ。
「ひよっこ」毎回楽しみに見ているので展示も楽しめた。勝田で特急に乗り換え家路に。

8月某日
図書館で借りた桐野夏生の「ジオラマ」(新潮文庫 平成13年1月)を読む。桐野は好きな作家で割とよく読むのだが、読むのは長編がほとんど短編集の「ジオラマ」ではじめて短編を読むことになる。桐野は「あとがき」で子供の頃、地面に埋まっている石ころを剥がす遊びに夢中だったとし、自分にとっての短編小説は「石をめくってみて、その下にあった世界を見る驚きや、その世界を書くこと」と書いている。続けて「様々な場所の様々な石をひっくり返すこと、その地中世界まで掘り下げるのは、私の場合、長編での仕事である」と述べている。なるほどねぇ。そういえば私も子供の頃、石をひっくり返して、蟻が右往左往しているのを飽かずに眺めていた記憶がある。

8月某日
「跳人」で健康生きがいづくり財団の大谷常務と。大谷さんは「生涯現役起業支援事業助成金」の資料を持ってきてくれる。高年齢者が起業するにあたって、募集や採用、教育訓練の費用を助成するというもの。人件費や備品の購入費用は対象とならないそうなので私が考えていたのとは違う助成金。でも大谷さんには感謝。