モリちゃんの酒中日記 9月その1

9月某日
御茶ノ水の「山の上ホテル」で社保険ティラーレの佐藤社長と社会保険研究所の清水君と待ち合わせて明治大学の田中秀明先生に「地方から考える社会保障フォーラム」の講師をお願いに行く。先生には財政と社会保障、とくに地方議員に関心を持ってもらいたい地方財政についてお話しいただきたいとお願いした。田中秀明先生は若い時に在籍していた大蔵省から厚生省老人保健部に出向していたことがあるそうで当時の部長は多田さん、岡光さんで若い部員に唐沢剛さんや武田俊彦さんがいたそうだ。御茶ノ水から町田へ、株式会社アイケアの鎌田社長へ「季刊誌へるぱ!」の当社の迫田と取材。介護という一種の準市場で収益を上げていく難しさと楽しさを取材。鎌田さんの前職は飲食業で40代前半。若いことと異業種経験が武器になっている。迫田とは町田で別れ新宿へ。「健康・生きがい財団」の大谷常務に連絡して御徒町で会うことに。御徒町の「仲ちゃん」という焼き鳥屋さんに入る。若い女性やカップルでほぼ満席。確かに焼き鳥はおいしいし、岩手の地酒もうまかった。
浅田次郎の「お腹召しませ」(中公文庫 2008年9月 単行本は同社から2006年2月刊)を読む。全6編の幕末マゲモノの短編集。それぞれの短編の冒頭に幼いころの作者と祖父の暮らしが挿入され、その祖父が明治初年生まれの曽祖父から聞いた話が原型となっていることが示唆される。「本当にあったかもしれない」と思わせる巧みな導入だ。表題作は婿が公金を持ち逃げしたことから、「切腹すれば家名を永らえることができる」と上役、妻女から「お腹召しませ」と迫られる武士の話。武士道は何よりも建前や名分を大切にする。逆に言うと建前や名分が立てばどのような理不尽も許された。切腹を迫られた武士は明治維新によって切腹は中止、佃の渡しの船頭となって明治時代を生きる、という話が曽祖父から祖父が聞いた話として結末で明らかにされる。江戸時代、確かに武士は支配者階級であったろうが、中級下級の武士は庶民、現在のサラリーマンと境遇的には似たもの同士。時代小説が読み継がれる所以でもあろう。

9月某日
「日本の財政-再建の道筋と予算制度」(田中秀明 中公新書 2013年8月)を読む。先日、講演をお願いした田中先生が財務省から明治大学に移った直後の著作で、新書ながら日本の財政について多くのことを学ぶことができた。日本の財政は先進国中に最悪の赤字と言われて久しい。しかし歴史的な低金利と赤字国債がほぼ国内で消化されていることから、ギリシャのようなデフォルトには至っていない。本書は日本の財政悪化の歴史的な経緯をたどりながらアメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツの財政再建の事例も明らかにする。財政の仕組み、国会と内閣の関係は、実は先進各国でも異なっていることが理解できた。日本の財政は「透明性」において先進各国に及ばないことと、国会における決算審議が予算審議に比べはるかに軽視されていること、財務省に対する各省の概算要求の際、その細目まで明らかにすることが求められていることなどが問題であろう。財政再建は予算制度の問題に限らず、極めて政治経済的な権力構造の問題であるのだ。
「音楽運動療法」の研究会に参加。音楽療法が介護予防や認知症のケアにどのような有効性があるか実証しようという研究会だ。元厚労省の宇野裕さんのほか、小金井リハ病院の川内先生、清水坂あじさい荘のサービス提供責任者、黒澤さん、音楽療法懇話会漢字の丸山さん、金井原苑苑長の依田さんが参加。私は「音楽療法」には素人ですが、異なる分野の人の話を聞くのは大変、勉強になります。

9月某日
「ファシスタたらんとした者」(西部邁 中央公論新社 2017年6月)を読む。本書によるとイタリア語のファシスタの原意は「結束者」「団結者」という意味で、西部は「そこ(未来)には混沌しか待ち構えていないと推測・予測・創造される状況では、頼みの綱は敏速なる決断力と果敢なる行動力で他者と結束して前進するしかない」「危機としての生を実践するとはそういうことなのだ」と書いているが、そういう意味で「ファシスタたらんとした」西部の半生が綴られている。道内一の進学校の札幌南高から東大に進学、東大教養学部の委員長、全学連幹部として60年安保を戦い、三つの刑事裁判を抱えるも大方の予想と違っていずれも執行猶予付きの判決を得る。東大大学院に進学の後、横浜国大、東大教養学部に職を得るが、人事を巡る低次元な構想に愛想を尽かせて辞表を提出、その後は文筆業や「知識人」としてのテレビ出演で口を糊しつつ「表現者」「発言者」といった雑誌を発行する。西部の面白さは何ものにも追従しないその独自性とあえて言えば文章の表現に現れる現世、世間に対する悪意のようなものではあるまいか。ところで西部はギルバート・K・チェスタトンの次の言葉を紹介する。「人生の最大限綱領は一人の良い女、一人の良い友、一個の良い思い出、そして一冊の良い書物を得ることにとどまる」。西部は亡くなった奥さんをはじめこの綱領に近いものを手に入れたという。

9月某日
元厚労省の阿曽沼真司さん、健康生きがい財団の大谷源一常務と会社近くの「跳人」で会食。私は次の日が静岡県の函南でゴルフがあるので8時過ぎに店を出て、「こだま」で熱海へ。熱海から函南は在来線で1つ目。函南までは順調に来たがタクシーがなかなか来なくて待つこと30分。ゴルフ場のホテルに泊まる。

9月某日
民介協の理事の皆さんとゴルフ。私は扇田専務、北海道の上田さんと回る。ゴルフは昨年秋にフィリピンのマニラでやって以来。上田さんはショートでバーディ。女性ながらなかなかの腕前。帰りの新幹線は上田さんと扇田専務、佐藤理事長と一緒。千歳空港に車を置いてある上田さんを除いてビールで乾杯。