モリちゃんの酒中日記 1月その2

1月某日
南阿佐ヶ谷のケアセンターやわらぎに石川はるえ代表訪問。「竹下さんを偲ぶ会」の出欠状況を報告、児童虐待防止の「子はたからプロジェクト」の話を聞く。HCM社に戻って大橋進社長とHCMの卓球プロジェクトの協力者、小田切さんと新年会。小田切さんは弘前実業の出身で大橋社長の一歳下ということだが、髪は黒々として若々しい。小田切さんの話を聞いていると太宰治の「津軽」など弘前周辺の人々を描いた小説の登場人物を思い出す。x

1月某日
「偲ぶ会」の打合せでフィスメックの小出社長を訪問。セルフケアネットワークの高本眞佐子代表も同道。打合せ後、高本代表と神田の「葡萄舎」へ。遅れて小出社長と社会保険出版社の社長で高本代表の夫でもある高本さんが参加。ボトルキープしていた小出社長の焼酎を空け、髙本さん新たにボトルキープした焼酎も空けたのではないだろうか?覚えてないのだけれど、70歳を超えたのだから少しは考えないとね。

1月某日
「コンビニ人間」(村田沙耶香 文春文庫 2018年9月)を読む。村田沙耶香は昨年確か「消滅世界」を読んで以来。彼女は文学仲間から「クレージー沙耶香」と呼ばれているらしいが、それも「なるほどね」と思わせる「コンビニ人間」であった。主人公はコンビニバイト歴18年、独身彼氏なしの36歳、古倉恵子。この作品は芥川賞受賞作だが、村田は当時、コンビニでバイトしていたからコンビニの描写は彼女の体験に基づくものなのだろう。コンビニの同僚だが勤務態度が悪く馘首された男性、白羽と古倉のアパートの一室で同居することになる。コンビニの同僚や古倉の妹は、結婚を前提とした同棲と勘違いして祝福する。誤解を受け入れて古倉はコンビニを寿退社するのだが。コンビニはある意味で現代を象徴するビジネスだと思う。女性の社会進出が進み、男女ともに単身者が増える。イートインが増え食事もコンビニで済ます。コンビニとスマホが現代社会の必須アイテムとなっている。その文学的な反映が「コンビニ人間」なのである。

1月某日
銀座で打ち合わせの後、新橋の「焼き鳥センター」へ。大谷源一さんと待ち合わせである。一般社団法人La Lienの神山弓子代表理事を紹介される。神山さんによると前に一度、大谷さんと3人で呑んだことがあるということだが、記憶にない。しかし話してるうちに神山さんが以前、客室乗務員だったことなどを思い出した。神山さんは宮城県石巻市の出身、大震災の当日は仙台と石巻を結ぶ仙石線に母親と一緒に乗車していたという。家は日和山で無事だったというが、立派に「被災者」である。代表理事をしている社団法人は健康長寿をプロデュースするとともに被災地の復興支援にもあたりたいと言っていた。

1月某日
「天皇制の基層」(吉本隆明 赤坂憲雄 講談社学術文庫 2003年10月)を読む。吉本と赤坂の天皇制を巡る対談集。底本となったのは1990年9月の作品社刊行の「天皇制の基層」である。昭和天皇が亡くなったのが1989年1月、対談は1989年の10月、11月、12月の3回にわたって行われている。つまり昭和天皇の崩御を受けて改めて天皇制を根底から問い直してみるという企画であったのだろう。折しも現在の天皇の譲位が決まり平成という年号も今年4月までらしい。さて30年前の対談だが、1924年生まれの吉本が65歳、1953年生まれの赤坂が36歳のときである。吉本は当時、思想界の巨人として誰もが仰ぎ見るような大家だった。対して赤坂は天皇制へ柳田国男や折口信夫など介してアプローチを試みる新進気鋭の研究者であった。「天皇制の基層」を読んで私がもっとも気になったのは昭和天皇と平成天皇の違いである。昭和天皇は昭和20年の敗戦まで現人神であり、明治憲法では万世一系の天皇が日本を統治すると定められている。敗戦後、人間天皇になったにしろ一般の国民にとっては「畏れ多い」存在だったのではないか。平成天皇は小学生の時に敗戦を経験し、米国人女性の家庭教師の影響もあってか考え方がきわめてリベラルであり、象徴天皇像を国民とともに作り上げてきたと言える。80歳を超えてもなお被災地や太平洋戦争の戦績を訪問する旅を続けている。赤坂は「象徴天皇制というのは、これまでのシステムとしての天皇制を中核に置いた天皇制の歴史が幕を閉じ、形骸化の段階に入って現れた最後のイデオロギー」とする。吉本も「僕は農業社会が少数化していき形骸化していくにつれて、天皇制も形骸化していくだろう」と語っている。これから1000年という長いタームで考えればそれはそうかも知れないと私も思う。国家や国境も消滅するかも知れないという長い射程で考えればである。当分はそうとう長きにわたって天皇制は存続するというのが、私も含めた国民の総意ではなかろうか。

1月某日
大学時代の同級生、内海純君が長期滞在しているイタリアから帰ってきているというので弁護士の雨宮英明先生、伊勢丹OBの岡超一君と集まることにする。クラスは違うが同じ政経学部の数少ない女子学生で、のちに新宿や赤坂でクラブのママをやる関さんも参加。場所は前に高橋ハムさんにご馳走になった有楽町の高知物産館の2階にある「おかず」。17時少し過ぎに店に行くと「17時30分の開店ですのでそれまで下の物産店を覗いていてください」と言われる。下の物産店の前にいると岡君が現れる。岡君は物産店で買い物。ついで関さんが来て「私も時間があったから物産店で買い物してたのよ」と言う。内海君も来たので4人で「おかず」へ。カツオのたたきや刺身の盛り合わせを頼む。内海君は日本に5月までいるというのでそれまでにもう一度呑み会を企画しようと思う。**