モリちゃんの酒中日記 10月その3

10月某日
日曜日の朝日新聞「歌壇 俳壇」から。ガザに想いを寄せて。「ガザの子はたぶん大谷翔平を知らない野球さえできなくて」(近江八幡市 寺下吉則)「『将来はヒズボラになる』と泣きながら父の屍のそばに座る子」(牛久市 高木美鈴)。袴田さん、無罪。「再審の無罪となりし弟をこの日も車椅子で押す姉」(寝屋川市 今西富幸)「弟よ、巌、巌は無実なり姉の見据ゑし判決下る」(東京都 笹山羊)。袴田さんは俳壇にも。「袴田さんさて何をせん秋の暮れ」(八王子市 額田博文)。次の2句は全共闘世代の俳句?「連帯も共闘もせず秋の蠅」(東京都新宿区 山口晴雄)「青茄子に思想の如く棘がある」(東京都渋谷区 佐藤正夫)。

10月某日
「あなたを待ついくつもの部屋」(角田光代 文藝春秋 2024年7月)を読む。部屋とはホテルの部屋のことである。ホテルは東京、大阪、上高地の帝国ホテルである。初出はIMPERIAL80号から122号とあるから帝国ホテルのPR雑誌に掲載されたものであろう。東京、大阪、上高地の帝国ホテルを訪ねる老若の女性を主人公とした42編の短編が収録されている。ホテルを舞台にした42編のショートストーリー、どれも都会的で洒脱であった。最後の「光り輝くその場所」は20歳のとき、はじめて帝国ホテルに足を踏み入れた楓子は、宴会場で開催されていた文学賞の受賞パーティに迷い込む。38歳になった楓子は、自身の受賞パーティ会場となった帝国ホテルへ向かうという話。

10月某日
17時30分に神田駅で前の職場の友人と待ち合わせ。少し早く出て上野の国立東京博物館で開催中の「はにわ展」を観に行こうかと思ったが、思い直して東京駅へ。丸の内口を出て、丸善の書籍売り場に向かう。吉田修一の新刊、「罪名、一万年愛す」を購入。丸の内口から歩いて神田駅へ。待ち合わせ時間にはまだ時間があるので駅近くの居酒屋で時間をつぶす。時間になったので神田駅北口へ。かつての同僚と北口近くの居酒屋で呑む。

10月某日
「猛獣ども」(井上荒野 春陽堂書店 2024年8月)を読む。高原の別荘地でのひと夏のできごと。密会中の男女が熊に殺される。愛に傷ついた管理人の男女と別荘の6組の夫婦に何が…。「夫婦って不思議だな」と思ってしまう。なんの関係もなかった一組の男女が出会い恋に落ち、家庭を営む。その不思議さを井上荒野はたんたんとさりげなく描く。巧み!

10月某日
幼馴染の佐藤君が出張で東京に出てくるので新橋で会食の予定。先日、国立東京博物館の「はにわ展」に行けなかったので上野駅で下車したら雨が降ってきたので、上野駅近くの西洋美術館に変更、クロード・モネ展が開催中だった。実は私は障害者手帳を持っているので公立の美術館や博物館は基本的に無料。平日の午後だったのに結構、混んでいて入場者が並んでいたが、こちらも障害者優先でスイスイ。しかもエレベータまで案内してくれる。一通り鑑賞したので新橋へ。昔、新橋烏森口の日本プレハブ新聞社という業界紙に勤めていたことがあった。会社があったビルには呑み屋さんが入っていた。約束の17時30分近くなったので烏森口へ。高校で1年後輩だった小川君、井出君などがすでに到着していた。女子の旧姓中田さん、佐藤君も揃ったので会場の銀座ライオン新橋店へ。実はこの集まりは室蘭東高スキー部のOB会なのだが、ほぼ幽霊会員だった私にも声が掛る。会費は6000円だったが、佐藤君がすべて払ってくれた。佐藤君は札幌でIT会社を創業、社長から会長に退いた。ありがたくご馳走になる。佐藤君にご馳走になったうえ、お土産に北海道の銘菓「わかさ芋」をいただく。

10月某日
「正しく読む古事記」(武光誠 エムディエヌコーポレーション 2019年10月)を読む。古事記と日本書紀は日本の国の成り立ちを伝えるという同じような役割を持っていると思っていたが、本書によるとその役割をそれぞれ違っていた。古事記は人々に読ませる「伝説集」で、日本書紀は、日本の公式の史書としてつくられた。古事記は天皇家の歴史であるのに対して日本書紀は、海外向け(当時は唐か)の日本の歴史で、記述内容も古事記が漢文を下敷きにした和文であるのに日本書紀は漢文であった。古事記には子供ころ親しんだ童話もとになったものもある。海彦山彦、ヤマトタケルなどなど。