モリちゃんの酒中日記 11月その1

11月某日
「転がる珠玉のように」(ブレイディみかこ 中央公論新社 2024年6月)を読む。ブレイディみかこの本に出合ったのは19年6月に出版された「女たちのテロル」を図書館で見て借りたのがきっかけだ。「女たちのテロル」は戦前のアナキストで、摂政暗殺を企てたとして死刑を宣告され、後に無期懲役に減刑されるも獄中で縊死した金子文子と海外の女性テロリスト2名の評伝をまとめたもの。これ以降ブレイディみかこの著作を読むようになった。「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は英国ブライトンでのアイルランド系イギリス人の夫と息子との暮らしを描いて話題となった。彼女は福岡の名門校、修猷館高校を卒業後、進学せずに英国へ渡った。「ぼくはイエローで…」の頃、中学生だった息子が「転がる…」では高校生で大学を受験するまでになっている。夫が癌になったり母親が死んだり…。それなりに起伏のある家族や周囲の人たちの人生を淡々と描く。

11月某日
社保研ティラーレを表敬訪問。吉高会長と佐藤社長へ挨拶。衆議院選挙ではティラーレは立憲民主党の神奈川県の新人候補を応援していたが、めでたく当選したそうだ。帰りに我孫子駅前の「しちりん」で夕食兼晩酌。

11月某日
アメリカ大統領選で共和党のトランプが当選。予想された大接戦とはならず、ハリスは敗退した。大統領選ではヒラリークリントンとハリス、二人の女性民主党候補がトランプに敗れている。米国の大統領は軍の最高司令官も兼ねるが、女性に最高司令官は務まらないということか。トランプはロシアのプーチンや北朝鮮の金最高指導者と親近性が高いように思う。それが国際間の緊張緩和に向かうのか。私はプーチンや金を増長させることを恐れる。

11月某日
「言葉果つるところ」(鶴見和子 石牟礼道子 藤原書店 2024年9月)を読む。本書は鶴見(1918~2006)と石牟礼(1927~2018)の対談集で、2002年に発行された(鶴見和子・対話まんだら)『石牟礼道子の巻』を底本としている。タイトルは鶴見が石牟礼を評して「言葉果てたるところから文学が出発する。そして文学は言葉果つるところに到達する、かつそこが出発点になる」と発言しているところからとられている。水俣病の闘いも「言葉果つるところ」から始まったし、水俣にほど近い島原の地で400年前に闘われた島原の乱も同様であった。水俣病の問題はもう終わったように私などは感じていたが、それはどうも終わっていないのだ。産業革命以降の人類の深刻な環境汚染が終わらないかぎり、水俣の問題は繰り返されている。

11月某日
週1回のマッサージで「絆」へ。今日は長男が休みなので車でスーパーウエルシアによってアイリッシュウイスキーを購入、ついでに床屋まで送ってもらう。床屋の後、近くの食堂「三平」で中華丼を食べる。駅前からバスでアビスタ前まで。

11月某日
「罪名、一万年愛す」(吉田修一 KADOKAWA 2024年10月)を読む。吉田修一は芥川賞受賞作家だが作品は純文学に限らず、恋愛小説、冒険小説と幅が広い。本作は冒険小説と言える。横浜の私立探偵に一風変わった依頼が舞い込む。「一万年愛す」と名付けられた35カラット以上のルビーを探してもらいたいというのだ。舞台は富豪の一家が滞在する九州の孤島。実は九州でデパート経営に成功した富豪一家の祖父には隠された秘密があった。