モリちゃんの酒中日記 12月その1

12月某日
国際医療福祉大学大学院の特別講演会を聞きに行く。講師は前長岡市長の森民夫さん。森さんは東大建築学科出身、建設省の住宅技官当時に知り合った。平成11年に長岡市長に当選、5期連続市長を務める。新潟県知事選に出馬するも惜しくも落選した。講演は長岡市の福祉政策を高齢者福祉政策、子育て支援、総合支援学校のカリキュラム改革、医療福祉に絞って行われた。縦割りの行政も「現場で横につながる」ことが人工透析患者への交通手段として「乗合タクシーの提供」などを通して語られた。与えられる福祉から参加する福祉への転換や「縦割りと縦割りの間には宝が埋まっている」ことがよく分かった。森さんは障害児の親と懇談して「とても市役所には相談できない」と言われてとてもショックだった、と語っていた。普通の市民にとって役所の壁は厚くて高いのだ。それを感じることのできる森さんも立派と思う。

12月某日
国立歴史民俗博物館の企画展示「1968」を観に行く。副題に「無数の問いの噴出の時代」とあるように、60年代末の学生の反乱を中心として「べ平連」(ベトナムに平和を!市民連合)などの市民運動や反公害運動に焦点を当てたものだ。京成佐倉駅で根津のスナック「ふらここ」のママ、半谷さんと待ち合わせ。というのは「ふらここ」の常連の「ミヤちゃん」が文科省の職員で現在、歴博に勤務中。ママを通して案内を頼んでいるのだ。改札口を出るとミヤちゃんが迎えに来てくれていた。歴博は佐倉城址の一角に建てられている。開館は1981年、想像していた以上に立派な建物だ。企画展示では全共闘では東大、日大をはじめ北大、弘前大、京大、広大が展示されていた。映像も流されていたが日大の映像では新宿の「ジャックと豆の木」の常連だったルポライターの橋本さん(元日大芸闘委)らしき人がアジっていた。早大全共闘には何も触れられてなかったのは残念だけれど、早大の全共闘は結成当初から対大学当局というよりも対革マルが最大の闘争課題で次が対民青、国家権力・機動隊だった。大学当局は少なくとも私の頭の中ではあまり重要ではなかった。その意味では全共闘運動のなかでも早稲田は特殊だったかもしれない。当時のアジビラも展示されていたが、当時は謄写版印刷だった。当時の謄写版(ガリ版)も展示されていて懐かしかった。そういえば謄写版に文字を刻むことをガリ切と呼んでいたっけ。会場の入り口には当時の立て看板(タテカン)を模して「無数の問いの噴出の時代!」という看板が。私が「なんか違うんだよなぁ」とつぶやくと私と同年代の女性が「そうよ。私だったらもっとうまく書くよ」と応じてくれた。ミヤちゃん案内されて常設展も覗く。歴博は第2連隊の兵舎の後に建てられたことを知る。銃剣を装着した三八歩兵銃はさすがに迫力があった。焼け跡闇市、初期の公団住宅の再現やゴジラも展示されていた。ミヤちゃんの案内で佐倉駅前の呑み屋さんへ。つまみも女将さんの勧める日本酒もおいしかった。我孫子に帰って駅前の「愛花」へ。常連のケイちゃんとこれまた常連の姉弟、姉の夫が来ていた。ケイちゃんの家で焼き肉パーティをやった流れらしい。

12月某日
次男の知り合いが編集している「酒場人」(オークラ出版)という雑誌が楽しい。「たのしい酒場、たのしい人たち」というサブタイトルからわかるように酒場情報というより酒場でのエピソードが満載なのだ。3号が2017年2月に出て以来、新しい号が出ていない。次男に聞くと「酒場人」の後継雑誌の「酒場っ子通信」の創刊号を持ってきてくれる。総力特集「ハツ」というのも笑えるし、酒飲みとしては「深い!」と思う。「酒場人」以来のテーマの一つが「昼呑み」。今日はそれに挑戦しようと1時過ぎに上野のガード下へ。もつ焼き屋の「大統領」を覘くと昼間から満席。外人客も多い。同じくガード下の「勇」へ。以前2~3回入ったことのある店だ。生ビールに続いてチューハイ、つまみはもちろんハツ、タン、レバ、砂肝。いい気持ちになって我孫子へ帰るとまだ3時。駅前の七輪が4時からなので、同じ駅前の市民プラザのオープンスペースで読書。4時から七輪でホッピーとウイスキーの水割り。昼呑みは確かに楽しい。楽しいけれど癖にならないようにね。

12月某日
「音楽運動療法研究会」の取材。京王線のつつじが丘で主要メンバーの宇野裕さんと待ち合わせ。三鷹市から介護予防事業の補助を受けている「シニアのための若返りリトミック事業」を見学する。講師は国立音楽院リトミック認定講師の船井真知子先生。会場の新川アパート集会場に着くと高齢者が三々五々集まってくる。参加者は500円の会費を払う。人数が揃ったので予定通り1時30分に開始。参加者は12人、男性は世話役の水野さん1人だけ。「冬景色」「きらきら星」を先生のピアノ伴奏に「パタカラ体操」と組み合わせて歌う。「パタカラ体操」というのは「パ」「タ」「カ」「ラ」の4つの音を発することで、咀嚼や嚥下機能を高めるという体操。先生は「12月1日は何の日でしょう?」と問いかける。1人がおずおずと「映画の日」と答える。これは大正解。聞けば若いころ映画館に勤めていたという。「映画の日は1000円で入れる」「私たちは高齢者割引があるからいつでも1000円」と映画館の話で盛り上がったところで、「これ誰かわかりますか?」と先生が往年の映画スターの写真を示す。「岸恵子」「高峰秀子」「佐多啓二」と即座に回答が出る。「回想法」による認知症の予防も兼ねているわけだ。「君の名は」「青い山脈」など映画の主題歌を歌い、「ビルマの竪琴」にちなんで「「埴生の宿」を歌う。「そういえばそろそろ年末、クリスマスも近いですね」と先生が巧みに話題展開、参加者を飽きさせないためだ。クリスマスにちなんで「ジングルベル」、年末ということで「歓びの歌」「トロイカ」を歌う。鈴を振ったりハンドベルを鳴らすことで無理なく体を動かす工夫もされている。予定の1時間半はあっという間に過ぎた。