モリちゃんの酒中日記 6月その1

6月某日
大分市の介護事業所、㈱ライフリーの佐藤孝臣代表取締役にインタビュー。佐藤孝臣さんは作業療法士で大分市内で自立支援型デイサービス事業を展開する傍ら、全国各地で自立支援という介護保険の理念に基づいて、利用者の要介護度を軽減させ介護保険を卒業させる重要さを講演で訴えている。要介護度を軽減させると介護事業所にとっては介護保険収入は減少となる。利用者にとっても重度化したほうが介護給付費が増えて「トクした」ような感覚を持つ人がいるそうだ。佐藤さんは自分で自分の身の回りのことができる方が利用者にとっても幸福度がアップすると語る。それだけではない、我々団塊の世代が後期高齢者となる2015年以降、今の勢いで要介護高齢者が増えていったらどうなるか?介護保険は税金と保険料で運営されていることを忘れてはならないと思う。佐藤さんは作業療法士の研究大会に講師として出席するために上京、その合間にインタビューに応じてくれた。

6月某日
「一億円のさようなら」(白石一文 徳間書店 2018年7月)を読む。本文が500ページを超える大著ではあるが、ストーリー展開が面白く3日程度で読み通してしまった。主人公は化学品製造会社に勤める創業者一族の鉄平。長年勤めた医療機器関連の会社をリストラされ家族4人で化学品製造会社のある福岡に移住した。インフルエンザで会社を休んでいた鉄平の家へ弁護士から妻の夏代に電話がかかったのが話の発端。弁護士からの電話に「妻の謎の過去」を感じた鉄平は妻に内緒で福岡に出張してきた弁護士と会うことにする。弁護士が明かしたのは妻が結婚前に遺産を贈与され、その相続財産は48億円という途方もないものだった。その間、娘は長崎の看護学校、息子は鹿児島の歯科大学に進学し、夏代は弁当製造工場の正社員となり、鉄平も創業者一族を巻き込んだ社内抗争のとばっちりを受ける。それに衆議院議員を目指す三鷹市の高松琢磨がからむ。高松は地元の地主の息子で鉄平の親友、藤木遊星を小学校の4年生から陰湿ないじめを繰り返す。高校生になった鉄平は秘かに琢磨を襲撃、琢磨は半身不随となるも国政を目指す。琢磨は邪悪なるものの象徴として描かれているのだが、大変盛りだくさんなストーリーで、私は白石一文のチャレンジ精神を評価したい。

6月某日
本郷さんからメールが来て南千住で呑むことに。南千住で6時に待ち合わせる。6時に南千住駅前に行くと本郷さんはすでに来ていた。今日は本郷さんの友人と3人で呑む予定。少し遅れてその友人、永井さんが来る。本郷さんは1947年生まれ、私は1歳下、永井さんはさらに3~4歳下。本郷さんは中大、永井さんは北大、私は早大のそれぞれ全共闘崩れが共通点。南千住から歩いて7~8分の「串揚げ茶屋たつみ」という店に入る。南千住仲通りという寂れた商店街の奥にある。中年の女性が2人でやっている店は、つまみもおいしかったし値段もリーズナブル。帰りは都電荒川線の三ノ輪橋から。

6月某日
「とめどなく囁く」(桐野夏生 幻冬舎 2019年3月)を書店で買ってすぐに読みだす。いつもの桐野作品以上にミステリアスでとても面白かったのだが、この1~2週間何やかやと忙しくて読後の感想を記す暇がなかった。で読後2週間の今、感想を述べようと思うのだが。富豪の塩崎克典の後妻に入った早樹は夫との年齢差は20歳以上、克典の娘や長男の嫁と同じ世代だ。早樹の前の夫は海釣りで行方不明となった。死体は発見されなかったが死亡が認定され塩崎と結婚することになった。ネタをバラしちゃうと実は夫は生きていた。夫は早樹と結婚する以前から付き合っていた女と切れることができず、釣りも密会のアリバイ作りに使われていたのだ。まぁほとんどあり得ない話と思うが、夫の生存を疑い始めた先の困惑や怒り、戸惑いを描く桐野の筆致はさすがである。読後2週間も経つと感想も粗雑になってしまう。スミマセン。

6月某日
全国訪問ボランティアナースの会(キャンナス)の菅原由美代表に「地方から考える社会保障」での講演をお願いする。キャンナスの本部は藤沢だが、菅原さんは「中村秀一さんの社会保障フォーラムを聴きに上京するからそのときに会いましょう」と言ってくれた。社会保障フォーラムは18時30分開始なので17時に会場のプレスセンターの1階で待ち合わせ。社保険ティラーレの佐藤聖子社長も来る。菅原さんはナースとしての出発こそ病棟のナースだが、結婚後は町の診療所や企業の診療所も経験、保健所にもいたことがあるそうだ。おそらくそこで現場の対応力を磨いたのであろう。その対応力は被災地でも発揮されている。菅原さんと話していると社会福祉法人にんじんの会の石川はるえ理事長が来た。私はこのところ仕事しすぎ気味なので、打ち合わせ後千代田線の霞が関から我孫子へ真直ぐ帰ることにする。霞が関始発の電車が来たので座って帰ることができた。我孫子で「しちりん」に寄り、久しぶりに「愛花」に顔を出す。

6月某日
呑み過ぎでお昼近くに起き出してボーッとしていると石川はるえさんから電話。「今、四谷だけどこれから会おう。我孫子に着いたら電話する」という。とにかく行動が速いからねー、ついていけません。日田市長選挙の話題になると思ったので大谷源一さんにも我孫子に来るように電話。我孫子駅の改札で待っていると石川さんが登場。我孫子のコビアンⅡに案内する。ほどなく大谷さんも合流。日田市長選挙に出る椋野美智子さんのために資金カンパを募ることで一致した。3人で白ワイン3本を空ける。コビアンはそれなりの雰囲気のあるレストランだが値段の安いのが特徴。石川さんが「我孫子に越してこようかな」と言っていた。私は心の中で「それは止めて」とツブヤク。2人を我孫子駅に送って、私は2日連続して「愛花」へ。看護師の「佳代ちゃん」が友達と来ていた。