6月某日
「おれたちの歌をうたえ」(呉勝浩 文藝春秋 2021年2月)を読む。四六判で600ページ近い長編ミステリー。ミステリー好きとは言えない私の興味を読み終わるまで持続させた作家の力量はなかなかのものである。本年度上半期の直木賞ノミネートは確実でしょう。戦争から長野県の現在は上田市に編入されている真田町に復員し、中学校の国語教師となった竹内と、竹内の五人の教え子、そして竹内の二人の娘を中心にして物語は回る。教え子の一人、サトシが変死体で見つかり、暗号が残される。暗号の解読を求めて元刑事で教え子の一人でもある河辺と、サトシの同居人であった茂田との奇妙な旅が始まる。ロード・ノベルでもあるわけなのだが、私にとっては登場人物が多過ぎ、ストーリーが複雑過ぎ。
6月某日
「新型コロナウイルスワクチン接種のお知らせ」が届く。市内に住む吉武さんがパソコンでの申し込みについていろいろアドバイスしてくれる。「どーせモリちゃんはできないだろうから奥さんにやってもらえ」と。その通りです。奥さんに申し込んでもらって来週に第1階の接種、6月最終週に第2回の接種が決まる。
6月某日
「野の春 流転の海第9部」(宮本輝 新潮文庫 令和3年4月)を読む。「流転の海」シリーズの完結編である。巻末の解説によると「流転の海」は37年間にわたって宮本輝が書き続けた。「流転の海」は福武書店の「海燕」1982年1月号から1984年4月号に連載されたが「第2部 地の星」以降は「新潮」に連載され、単行本化、文庫本化も新潮社である。30年ほど前に「流転の海」シリーズの最初の方は読んだ記憶がある。50歳で房江と結婚した熊吾は伸仁に恵まれる。伸仁はほぼ宮本輝と考えて間違いない。熊吾と房江は実の父母である。「野の春」では高校を卒業した伸仁が一浪の後、追手門学院大学に進学、テニス部での合宿費用を稼ぐために房江の勤めるホテル(多幸クラブ)のボーイのアルバイトに精を出す。熊吾は中古車販売業に勤しむ一方、浮気相手の森井博美と同棲するために家を出る。熊吾という男は面倒見も気前もいいが、女にも持てるのである。時代は1966年から1968年にかけてである。小説のなかにも中国の文化大革命やベトナム戦争の日本への影響が影を差す。10.8羽田闘争はじめ激しくなっていく学生運動も時代の空気を彩る。「流転の海」全9巻は日本の敗戦から高度成長の絶頂期を生きた男、熊吾の一代記であるとともに、あの時代の鎮魂歌でもあると思う。私の1966年は道立室蘭東高校の3年生、受験勉強に身が入らずボーっとして生きていたように思う。1967年は東京の叔母さんの家から予備校に通った。10.8に衝撃を受け大学に行ったら学生運動をしようと秘かに決意した。
6月某日
家の近くの香取神社で月1回、第1土曜日に開かれる朝市に行く。11時頃の起床だったので朝食もとらずに香取神社へ。何しろ朝市なので午後にはお店が撤退してしまうのだ。さして広くもない境内には野菜やコーヒーなどの飲み物、アクセサリーを売る店が揃い、想像以上に賑やかだ。私は古本のコーナーで水木しげるの「総員玉砕せよ!」と吉田満の「戦艦大和ノ最期」を購入(2冊で600円)。香取神社から手賀沼公園を通ってわが家へ。香取神社の手賀沼公園も子連れの若い夫婦をたくさん見かけた。少子化なんてどこの国の話ですかと思ってしまう。
6月某日
ワクチン接種に行ってきた。場所は我孫子駅南口のイトーヨーカ堂の3階。南口のイトーヨーカ堂は1、2階は店舗で3階はスポーツジムと催事場になっているが、今回は催事場がワクチン接種会場となっている。会場は名戸ヶ谷我孫子病院が運営していて、看護師さんと女性の事務職員が体温測定や受付を担当していた。年配のドクターから問診を受けた後、ワクチン注射、チクッとした程度だった。15分ほどパイプ椅子に座って会場を出る。あっけないほど簡単だった。