モリちゃんの酒中日記 6月その1

6月某日
北海道の室蘭市で同じ小学校、中学校、高校に通った山本君から前進座歌舞伎公演のチケットを2枚貰った。劇場は池袋のサンシャイン劇場。演目は山田洋次脚本の「裏長屋騒動記」で、落語の「らくだ」「井戸の茶碗」を下敷きにしているという。元年友企画の石津さんを誘い、劇場前で待ち合わせ。前進座公園だが、客演の曾我廼家寛太郎(松竹新喜劇)が怪演。ほぼ満員の観客たちも満足していたようだ。もちろん、我々も満足。終って有楽町線の東池袋から有楽町へ。有楽町周辺の焼き鳥屋で石津さんにご馳走になる。焼き鳥屋にも外国人が数組、欧米系だけでなく東南アジア系、インド系?と多彩であった。

6月某日
内神田のマンションにある社保研ティラーレを訪問。約束は16時だったが30分早く着いてしまった。吉高会長が対応してくれる。吉高会長の自宅は茨城県の神栖市だが、この40年間東京都内にマンションを借り、週末に神栖へ帰るという二重生活を送っていた。しかし80歳になったのを機に都内のマンションを撤収、神栖に定住することにした。「地方から考える社会保障フォーラム」の開催について私がお手伝いをしたことから、本日は私に晩御飯をご馳走してくれるそうだ。17時近くなったので予約している神田駅前付近のタイ料理屋へむかう。タイ料理を食べるのは初めてだったが、なかなか美味しかった。人気の店らしく18時頃にはほぼ満員になった。遅れて社保研ティラーレの佐藤社長も到着。佐藤さんは現在、立憲民主党の衆議院議員の秘書をやっている。二人から重ねて感謝されたが、感謝しなければならないのは私の方だ。「社会保障フォーラム」を手伝うことになったのは私が60歳を過ぎてからだが、毎回テーマや講師の選定、依頼などが楽しかった。タイ料理屋を出て、近くの喫茶店でおしゃべり。楽しい時間をありがとう!

6月某日
「YABU NO NAKA ヤブノナカ」(金原ひとみ 文藝春秋 2025年4月)を読む。タイトルは芥川龍之介の短編小説「藪の中」を意識したものだ。芥川の小説は平安時代を舞台に、藪の中で男の死体が発見される事件を描く。細かなストーリーは忘れてしまったが、ネットで検索すると「事件の真相をめぐり、4人の目撃者と3人の当事者が証言を述べるが、それぞれの証言が食い違い、矛盾し、真相が明らかにならないという構造が特徴」だそうだ。金原の小説は小説家の長岡友梨奈を巡って担当する現・元の編集者、友梨奈のパートナー、諸上塚の娘、元編集者の息子などが状況を語る。それぞれが「状況を語る」というところが芥川の小説ともつながるということだろう。私は面白く読んだが、元担当編集者が50代で小説家が40代、小説家のパートナーが20代、娘や息子は10代から20代という設定。50代の元担当編集者の使う言葉は了解できるが、40代、20代、10代の使う言葉には、私には意味不明のものも散見された。私も70代後半、現代小説を読むのはちと無理がある?

6月某日
「美土里倶楽部」(村田喜代子 中央公論新社 2025年3月)を読む。村田喜代子は80歳、福岡県中間市在住。八幡市の中学校を卒業後、鉄工所に就職。結婚、子育て後に同人雑誌に参加、「鍋の中」で芥川賞受賞。「美土里倶楽部」は夫を病で喪った主人公、美土里とその周辺の未亡人たちの話し。それなりの喪失感を抱きつつ、それぞれが前向きに生きて行こうとする…。「未亡人倶楽部」の話しと言ってもいいかも知れない。私は以前から村田喜代子の小説は読んでいた。私より3歳年上の村田とは、価値観を共有しているという想いが強いのだ。比較するつもりはないが(そういって比較しているのだが)、金原ひとみはたぶん、大卒で父親は大学教授。金原はたぶん都内居住、もしかしたら港区在住。中卒の芥川賞作家は私の記憶では村田喜代子と西村賢太くらい。西村が亡くなった今、村田にはまだまだ元気で頑張ってもらいたい。

6月某日
監事をやっている一般社団法人の理事会が東京駅八重洲口の貸会議室で開かれるので出席。13時30分の開催だが、東京駅に着いたのが13時頃、昼食を食べるまもなく会場へ。開会にあたっての会長挨拶が毎回、面白い。今回はトランプ大統領と盟友だったイーロン・マスク氏の訣別に触れて「二人とも大富豪ですからね。合うわけがありません」だって。理事会を無事に終えて徒歩で神田駅まで歩く。神田駅からJRで一駅、秋葉原へ。駅近くの中華バーミアンで大橋さんと土方さんと待ち合わせ。土方さんからお土産をいただく。4時から4時間近くバーミアンで呑んで食べて喋る。