モリちゃんの酒中日記 6月その3

6月某日
「パレスチナ解放闘争史1916-2024」(重信房子 作品社 2024年3月)を読み続けている。何しろA4判で460ページを超え、しかも本文2段組で小さい文字がビッシリ。読み始めてほぼ1週間でやっと半分まで読み進んだ。巻末の〔著者略歴〕によると、「1945年9月東京生まれ。明治大学在学中に社学同に加盟、共産同赤軍派の結成に参加。中央委員、国際委員会として活動し、72年2月に出国。日本赤軍最高幹部としてパレスチナ解放闘争に参加する。2000年11月に逮捕、懲役20年の判決を受け、2022年に出所」とある。

6月某日
監事をやっている一般社団法人の総会が東京駅八重洲口近くの貸会議室で開かれる。開始は1時30分からだが、1時に八重洲口地下の定食屋でランチを済ませ、会議室に入る。定刻前に出席者が揃ったので会議を始める。ここの会長は弁護士の先生で開会のあいさつが何時も面白い。今回は7月7日投開票の東京都知事選に触れてポスター掲示の権利を売買する行為について厳しく批判していた。総会で監査の結果を私が読み上げるなどして無事に終了。今日は7時から西国分寺で評議員をやっている社会福祉法人の評議員会があるので中央線で東京から西国分寺へ移動。7時には時間があるので昼間からやっている居酒屋で時間をつぶす。6時30分過ぎに集合場所の西国分寺駅南口ロータリーに行くと、Y評議員が迎えの車にすでに乗っていた。決算報告を受けた後、理事長が創業者のIさんから厚労省出身のNさんに交代したとの報告があった。評議員会終了後、近くの小料理屋さんで懇親会。理事長になったNさんや評議員のYさんは旧知の仲だが、その他の評議員は年に2回の評議員会で顔を合わせるだけ。おじいさんが大正時代に創業した社会福祉事業を継承した人は、NHKの朝ドラ「虎に翼」は当時の現実を伝えていると話していた。懇親会終了後、タクシーで自宅まで。私は同じ我孫子在住のY評議員と同乗する。我孫子までの1時間30分、Y評議員の話をたっぷり聞く。Y評議員を降ろした後、自宅に着いたら12時を過ぎていた。

6月某日
図書館で借りた「3千円の使いかた」(原田ひ香 中公文庫 2022年8月)を読む。人気のある本らしく「この本は、次の人が予約してまってます。読み終わったらなるべく早くお返しください」と印字された黄色い紙が貼ってあった。家庭経済小説だね。私自身は世界経済や日本経済の現状と将来には興味はあるが、自分の家庭経済には全くと言っていいほど興味はない。現役時代も年金生活の現在も家計は奥さんの担当。私は毎月小遣いをもらうだけだからね。したがってこの本のストーリーにもあまり興味を魅かれなかった。原田の原作のTVドラマ「一橋桐子(76)の犯罪日記」(松坂慶子主演)は面白かったけれど。

6月某日
週2回の絆マッサージ店。同居している長男が休みなので車で送って貰う。マッサージを受け、「気のせいか腰の痛みが軽くなりました」とマッサージの先生に伝えたら「気のせいではありません」と訂正された。たいへん失礼しました。帰りも車。途中、ウエルシアによってタンカレードライジンを購入。帰宅して「虎に翼」の再放送をみる。遅い朝食兼ランチ。妻はアビスタ(公民館と図書館が併設されている)で体操。私は重信房子の「パレスチナ解放闘争史」の残りを読む。

6月某日
「パレスチナ解放闘争史1916-2024」(重信房子 作品社 2024年3月)を読み終わる。10日以上かかったが、面白かった。著者の重信房子は、後にテルアビブの空港で銃を乱射して自爆した奥平剛士と偽装結婚して日本を出国、パレスチナ解放闘争に参加した。日本に帰国中の2000年10月に逮捕、懲役20年の判決が最高裁で確定、2022年に出所した。本書は獄中で書かれた原稿をもとに編集された。昨年の10月7日以降、パレスチナではイスラエル軍による、ジェノサイド攻撃が続いている。本書は書名の通り、第一次世界大戦中から現在に至るパレスチナ解放の戦いの歴史である。イスラエルはパレスチナ人の土地を侵略し、不法にイスラエル人の入植地を拡大させている。これは戦前に日本軍が朝鮮半島や中国大陸で行った不法行為、残虐行為を連想させる。日本軍は1945年8月にアメリカを中心とする連合軍に敗北するが、パレスチナ問題についてアメリカは終始イスラエル支持の姿勢を変えていない。バイデン、トランプともにイスラエル支持である。民主党、共和党ともに在米のユダヤ人からの政治献金に依存するところが大きいためであろうか。日本はアラブからの原油輸入に大きく依存しているためか、ハマースのイスラエル攻撃に対しても、イスラエルのガザ侵攻に対しても批判的で早期の和平を唱えているようだ。しかし本書を読むと、もともとパレスチナの土地にはアラブ人が住んでいた。第一次世界大戦まではオスマントルコが支配していたが、英国は戦後の独立を条件にアラブを味方につけた。この辺は映画「アラビアのロレンス」に詳しい。しかしユダヤ資本も味方につけたい英国、米国はユダヤ国家の創設も約束した。二枚舌外交である。イスラエルは今や中東で随一の軍事大国である。しかしだからといって不法な軍事行動が許されるものではない。
ネタニヤフはパレスチナ人をシナイ半島に移住させパレスチナ国家としたらどうか、と提案しているが、これは帝国主義者の勝手な論理である。イスラエルは今や完全に帝国主義国家となっている。原爆も保有しているようだ。国連は何度もイスラエルの軍事行動を非難する決議を賛成多数で可決しているが、安保理では米国の拒否権により葬り去られている。今、緊急に必要なのはイスラエルのガザ侵攻の停止、そして侵攻前の原状回復であろう。イスラエルによる土地の不法占拠、不法入植についても原状回復が必要だ。本書の表紙にはパレスチナ人の少年が果敢にイスラエル軍の戦車に投石している写真が使われている。写真説明によると「2000年10月29日、ガザ市郊外で、ファレス・ウダが威嚇的なイスラエルの戦車に、石を投げた。11月8日、彼の写真が撮影されてから9日後、ファレスは首を撃たれ、イスラエル国防軍に殺された」とある。少年のインティファーダ(民衆蜂起)である。不法な侵略、不法な入植には抵抗することこそが正義である。