社長の酒中日記 4月その1

4月某日
夕方、生活福祉研究機構の専務理事で現在、和歌山市在住の土井康晴さんから電話。「今晩、空いてる?20時30分まで新橋のルノワールにいるのだけれど」。「空いてるけれど20時30分まで呑む相手を探すよ」と答えて、「健康と良い友だち社」の市川さんに電話。ニュー新橋ビル2階の「初藤」で待つことにする。市川さんが各方面、とくに医療関係に顔が広いのは知っていたが、今日驚いたのは最近亡くなった相撲協会の北の湖理事長とも知り合いだったということ。なんでも市川さんの結婚式にも来てくれたということだが、「えっ市川さんて結婚してたんだっけ?」。そんな話をしているうちに土井さんがルノワールから到着。研究会の流れということで社会福祉法人の理事長や国立病院機構の理事、地方自治体の職員も一緒だった。彼らとも楽しく歓談し11時ころ散会。土井さんはまた呑みに行ったようだった。次の日「これから和歌山に帰る」という電話があった。

4月某日
図書館から借りた山田詠美の「学問」(新潮社 09年6月)を読む。山田詠美としては少し変わった舞台設定と登場人物と思う。ストーリーは元高校教諭、香坂仁美の死亡記事から始まる。仁美は7歳のとき静岡県美流間市に父の転勤にともない引っ越してくる。そこで知り合った同級生、心太、千穂、無量との成長物語なのだが、たんなる友情物語ではなく、セクシュアルな成長譚であるところが面白い。仁美だけでなく4人の死亡記事と無量の妻となった素子の死亡記事も紹介される。青春と背中合わせにあった死、旺盛な生それは性でもあるのだが、生のなかにも潜んでいる死を描いたともいえるのではないか?

4月某日
安倍政権の大勢は消費税の17年4月からの増税を引き延ばす方向に傾いているようだ。景気に配慮してということらしいが愚かなことだと思う。増税分は年金、医療、介護、子育ての社会保障の構造改革に充てるということになっていたはず。増税が先送りされるということは社会保障改革も先延ばしになるということである。同時に財政再建も遠のく。そうなれば国債金利も上昇し日本はギリシャ化の方向をたどる可能性が高まる。日本経済の規模はギリシャの比ではないから日本発の世界恐慌を招きかねない。増税は短期的には消費を抑制し景気を下振れさせるであろう。だがそれを恐れて増税を先送りさせれば社会保障の構造改革は進まないことを意味する。今回の増税はむしろ構造改革の好機、国民の意識改革の好機ととらえるべきと思う。経済の成長期には利益の再配分が政治の役割であったが現在は負担の再分配が求められている。それをやるのが政治家の役割と思う。

4月某日
新橋の「花半」でSMSの長久保氏と竹原さんと待ち合わせ。長久保さんたちは7時過ぎになるということなのでHCMの大橋社長を呼び出して6時半くらいから呑み始める。当社の迫田、長久保さんたちも合流。長久保さんは北海道教育大学の釧路分校の出身、大橋さんも明治生命時代に釧路に駐在していたそうで釧路の話で盛り上がる。そういえば竹原さんも札幌出身、迫田も高校時代に岩見沢に2年間いたということで、今日の4人はたまたまだが北海道繋がりということになる。

4月某日
社会保険研究所で「月刊介護保険情報」の校正をやっている旧友のナベさんが「この本、読む?」と言って沢木耕太郎の「ペーパーナイフ」(文春文庫 87年2月)を差し出す。沢木の70年代の作家論、書評をまとめたものだ。沢木は私より1年年長。団塊の世代である。若いうちからノンフィクション作家として注目され、私も「敗れざる者たち」「テロルの決算」「一瞬の夏」「檀」「流星ひとつ」など愛読したものだ。写真で見るとなかなかの好男子で同世代としてはやや「まぶしい存在」でもある。ナベさんがこの本を私に勧めたのは、私が愛読する田辺聖子の作家論が掲載されているからなのだが、「虚構という鏡 田辺聖子」というタイトルで、予想に違わず「な~るほどね!」という内容だった。たとえば田辺にとって「大事なのはストーリーではない。そうではなく、作者に極めて近似した感受性を持つ主人公の、まさにその感受性そのものなのだ。それをどれだけ生き生きと描けるかが重要な問題になる。ストーリーはその感受性によって運ばれ、流れていくにすぎない」という一文。田辺の感受性≒主人公の感受性≒読者の感受性ということなんだと思う。この不等式は田辺が幅広い読者に支持されている現在にのみ通用するものではない。源氏物語が時代を超えて支持されたように田辺の小説は「普遍」なのである。

4月某日
私が年友企画に入社したのは今から30年以上前。年友企画自体はそれより2、3年前に年金住宅福祉協会(年住協)の申し込み書類等を作成するために社会保険研究所の現社長、川上さんなどにより設立された。年住協は年金積立金を原資にサラリーマンに住宅資金を貸し付けていたがそれを所管していたのが当時の厚労省の年金局資金課。当時の課長がのちに内閣府と厚労省の次官、人事院総裁を歴任する江利川さん。その後任が江利川さんと同期の川辺さんだ。当時課長補佐だった足利さん、岩野さん、年住協の部長だった竹下さんたちと江利川さん、川辺さんを囲む会を不定期で開催している。昨日は「ビアレストランかまくら橋」で看護大学の五條先生とSCNの高本代表理事をゲストに6時からスタート。五條先生はお茶の水女子大出身で応用倫理を専攻しているということだった。終了してから竹下さんを誘って近くの「神田バー」へ。

4月某日
地方議員を対象にした「地方から考える社会保障フォーラム」の運営の手伝いをしている。第9回は4月20日、21日で開かれるが、社会福祉法人にんじんの会の石川はるえ理事長にも講演をお願いしている。事前の打ち合わせということで荻窪駅前の「源氏」へ、フォーラムを主催する社保研ティラーレの佐藤社長と伺う。打合せをすませたところで国際医療福祉大学教授で虎ノ門フォーラムの理事長、中村秀一さんが来る。「源氏」は石川さんが贔屓の店で、美味しい日本酒と肴が特徴。で、ちょいと呑み過ぎ。