社長の酒中日記 7月その4

7月某日
運営を手伝っている地方議員を対象にした「地方から考える社会保障フォーラム」が10回目を迎えた。初日は小黒一正法政大学教授の「地域包括ケア・コンパクトシティ構想」と安中健厚労省災害対策室長の「災害と住民保護」、そして元厚労事務次官の江利川さんの「地方自治と社会保障」だ。江利川さんは「少子高齢化」と一口に言うが「高齢化」は私たちが望んで手に入れたものだが「少子化」は克服すべき課題として「地方から少子化を克服できないか」と地方議員に訴えた。そして自らの役人人生を振り返りながら、仕事に取り組む姿勢として情報、英知を集め信頼と忍耐、「志」をもって政策を立案する、判断基準は「義」(正しい政策であるか)と「恕」(国民に対して思いやりがつくされているか)と語った。江利川さんとは年に何回かお酒を吞む仲だがこうした話はなかなか聞けない。フォーラム終了後、30年近く前、江利川年金局資金課長の後任で江利川さんの同期の川辺さん、当時の課長補佐だった足利さん、岩野さんらと「ビアレストランかまくら橋」で歓談。結核予防会の竹下専務、SCNの高本代表、当社の岩佐が加わる。

7月某日
愛知県と三重県で管理栄養士として活躍している奥村圭子さんが会社に来てくれるというので休日だけど会社に出勤。奥村さんと当社の迫田と「地域包括ケアパンフ」の栄養支援について打合せ。「高齢者の低栄養」という切り口ではなく「高齢者の暮らし」という幅広い観点から食事や栄養について考えるようなパンフレットにしたいということで一致した。
午後、我孫子の川村女子学園大学で市民向けの食事講座があるというので吉武さんに誘われる。天王台の駅で吉武さんのベンツに同乗、川村学園に向かう。栄養学科の福永先生の指導のもとたくさんの料理が並べられていた。見た目も食欲をそそるが味もなかなかだった。
図書館で借りた「シングルマザーの貧困」(水無田気流 14年11月 光文社新書)を読む。
著者は70年生まれの社会学者だが中原中也賞や晩翠賞を受賞した詩人でもある。シングルマザーとは言うまでもなく「離婚等により一人で子育てする女性」のことだ。日本社会でも女性の社会進出が進み女性の自立度が増すにつれてシングルマザーは増加している。しかし社会そのものが積極的にシングルマザーやその子供たちを受け入れているかとなるとそうでもないようだ。世間というか我々はいまだに「父母と子供」という標準家族の幻想にとらわれている。これから一人暮らしや夫婦のみ世帯の高齢者世帯が増えてくる。家族の個別性、独自性も高まってくると思う。「標準」という幻想には囚われない方がいい。

7月某日
三浦しをんの「まほろ駅前番外地」(文春文庫 12年12月 単行本は09年10月)を読む。三浦は辞書編纂を背景にした小説「舟を編む」に続いて読むのは2作目。ペンネームからは男女が判別としないのでWikipedīaで調べると30代の女性のポートレートが掲げられていた。物語はまほろ駅前で便利屋を開業する多田と多田の高校の同級生、行天を軸として展開される。2人とも30代バツイチ。いろいろなエピソードが積み重ねられながら多田と行天、それ以外の主要な登場人物の過去も明らかにされていく。こういうのは割と好き。こういうのとはストーリーの庶民ひとりひとりに過去があり歴史があるということ。

7月某日
阿曽沼さんが次官のとき次官付きだった伊藤ブーちゃんと健康生きがい財団の大谷常務と富国倶楽部で会食。伊藤さんが同じく次官付きだった石川リコさんを誘って、当社からは迫田が参加。次官というのは言うまでもなく事務方のトップなわけだが、実際に政策を立案し遂行するのは各局部課に任せているし、次官室にはそうした機能はない。逆に言うと事務方のトップではあるが「次官は孤独な存在」と言えるかもしれない。阿曽沼さんは「チーム阿曽沼」として次官付きや運転手をとても大事にしていたように思う。ブーちゃんは現在、老健局の介護支援課の筆頭補佐。迫田の質問にも丁寧に答えていた。

7月某日
「地方から考える社会保障フォーラム」の写真ができたので社保研ティラーレの佐藤聖子社長と厚生労働省に届けに行く。保険局の城総務課長は不在だったが雇用均等・児童家庭局の山本麻里審議官には手渡すことができた。山本審議官は山口市出身。部屋に山口市の大きなポスターが貼られていた。年金局年金課に寄って間課長に「障害年金と診断書」を手渡す。障害年金の特に精神疾患に関する判定は地域によってバラつきがあるようだ。間課長は「こういう書籍は大事ですね」と言ってくれた。医政局の地域医療計画課在宅医療推進室に鈴木幸一さんを訪ねるが不在。「介護職の看取りとグリーフケア」の報告書を置いてくる。鈴木さんは社会福祉士で公益社団の日本医療社会福祉協会から厚労省に出向中。会社に帰ったら鈴木さんからお礼のメールが来ていた。当社の岩佐とフィスメックの小出社長を訪問、地域包括ケアパンフの「地域で支えるメンタルヘルス」の打合せ。打合せ終了後、小出さんに「吞みに行こうよ」と誘うと「いいですよ」。神田の「葡萄舎」へ。

7月某日
八王子市で介護事業所向けに社会保険労務士業務を行っている吉沢社会保険労務士を訪問。地域包括ケアパンフの「介護離職ゼロ」の打合せ。吉沢さんの事務所は八王子市めじろ台。神田から中央線で新宿へ、新宿から京王線の特急でめじろ台へ。駅から数分の閑静な住宅地の一角に吉沢さんの事務所兼自宅があった。吉沢さんは学校を卒業して福祉事業所に就職、希望に反して事務職を命ぜられそこで社会保険関係の業務をやったのが社会保険労務士になったきっかけという。介護事業にも精通した社会保険労務士として貴重な存在だ。帰りにめじろ台の駅前の焼鳥屋「鶏道楽」に寄る。焼き鳥が旨かった。