社長の酒中日記 8月その1

8月某日
青木昌彦氏が先月亡くなった。日本経済新聞に「私の履歴書」を連載し、日経には訃報とともに「評伝」が載せられそれだけでも青木氏が高名な経済学者であることが知れる。だが私などにとっては青木氏は60年安保ブンドの理論的指導者、姫岡玲二としてなじみが深い。なじみが深いとは言っても氏の「国家独占資本主義」を読んだわけでもなく、われわれ70年安保世代にとってはなかば「伝説の人」であった。そんなわけで氏の死に際して何か著作を読んでみようと例によって近くの我孫子図書館を訪れた。ちくま新書の「青木昌彦の経済学入門」(2014年3月)というのがあったので借りて読むことにする。通読してみてこの人は大変に頭脳明晰で創造性にも富み、なおかつ謙虚であることが理解できた。
 マルクス経済学から宇野弘蔵の原理論、段階論、現状分析に触れて「意外と現在の比較制度分析の考え方と似通っているところがあります」として、制度とは何かを均衡論として原理的にとらえ、これが各国、各時代にどのように表れるか比較形態論的に考え、それをもとに政策論やメカニズム・デザイン論が現状分析にあたるというわけだ。なによりも感じたのは氏が「失われた20年」ではなく「移りゆく30年」と強調していることである。たとえば日本の終身雇用制度や社会保障制度、教育制度、グローバル化した経済への対応など「失われた20年」という発想ではなく「移りゆく30年」のなかで、どのように制度的な移行ができるかが問われているのだと思う。

8月某日
社会福祉法人長岡福祉協会の経営する特別養護老人ホーム「新橋さくらの園」で夏祭りがあるというので出かけることにする。ここは大規模福祉施設「福祉プラザさくら川」を運営する施設。長岡福祉協会首都圏事業部では現在、1都2県に拠点6か所、20事業を展開している。先月、月島の特養を見せてもらった。月島で取材させてもらった笹川施設長も浴衣を着てサービスをしていたので挨拶。長岡福祉会を紹介してくれたSCNの高本、市川さんも「うちわつくり」を出店していたので顔を出す。1時間ほど見学して一緒に行ったHCMの大橋社長と施設を出る。ニュー新橋ビルで酎ハイを頂く。今日は我孫子の花火大会。あびこ型地産地消推進協議会の米沢会長のマンションの屋上から見物しようと川村学園大学の吉武副学長から誘われているので行くことにする。会場の正面、8階建てのビルの屋上なので花火もよく見えたうえに暑さもしのげた。

8月某日
プレハブ建築協会(プレ協)の合田専務と神田の葡萄舎で待ち合わせ。合田さんは私が日本プレハブ新聞社の記者だったころだから、今から30年以上前に初めて会った。合田さんは当時の建設省住宅局住宅生産課で工業化住宅つまりプレハブ住宅担当の係長だった。つまり日本プレハブ新聞としては絶対に外せない取材対象だった。毎週毎週、住宅生産課に顔を出したが、合田さんは嫌な顔ひとつせずに付き合ってくれた。合田さんは東大の都市工学科を出た秀才だが私たちともよく呑みに付き合ってくれる。そう言えば私がプレハブ新聞の記者だったころプレ協の専務はずいぶん「おじいちゃん」だった印象だけど、今、世間の若い人たちから見れば、私たちは立派な「おじいちゃん」なんだろうな。遅れて健康生きがいづくり財団の大谷常務が参加。

8月某日
地方議員を対象にした「地方から考える社会保障フォーラム」に参加。そまま夜の意見交換会にも出る。講師として参加した唐沢保険局長、ふるさと回帰支援センターの高橋代表理事も出席してくれた。我孫子の関市会議員や下関の田辺市会議員などが土地の名物を差し入れてくれる。私としては「高齢者の栄養指導と食事」の話をした管理栄養士の奥村恵子さんの話が興味深かった。名刺を交換して少しだけだが話をすることができた。

8月某日
会社近くのビルの地下に「ちょろっと」という小料理屋ができた。以前は焼き鳥屋さんで何度か行ったことがある。いつの間にか代替わりして小料理屋になっていた。東商の鶴田さんを誘って当社の岩佐、迫田と行くことにする。内装も洒落た感じに変わっており、なにより料理が見た目も綺麗で美味しかった。店主は岡山県津山市の出身で岡山の地酒も旨かった。呑み代込みで一人5000円は安いと思う。

8月某日
高田馬場でグループホームを運営している社会福祉法人サンの理事をやっている。介護の質を向上させながら職員の待遇にも配慮しなければならないし、そのためには入居者の確保が欠かせない。それに社会福祉法人である以上、地域の福祉への取り組みも必要となってくる。気軽に理事を引き受けたが簡単な仕事ではない。勉強のために週に一度は訪れ理事長や事務局の人たちと話すようにしている。今日も16時過ぎに訪問して理事長と懇談。評議員をやってもらっていた三木智子さんが亡くなったことを知る。お通夜は明日と言うことなので一緒に行くことにする。健康生きがいづくり財団の大谷常務に電話して、「レストランかまくら橋」で地域福祉の展開等についてレクチャーを受ける。

8月某日
三木さんのお通夜が南柏会館で行われる。サンの西村理事長と参列。三木さんは総合病院の総婦長を長く務め、看護師やドクターが多く参列していた。現職の看護部長が弔辞を読んでいたが、患者本位の看護を貫いた人だったようだ。私も以前組織運営上の悩みを聞いてもらったことがあるが的確な返答だった。お通夜は無宗教で音楽葬だった。こういうのも悪くない。