社長の酒中日記 2月その2

2月某日
松戸の聖徳大学の篠崎先生に「介護マスト」の原稿を頼みに行く。松戸駅西口近くのドトールで待ち合わせ。篠崎先生は前任校の八戸学院大学へ取材に行ったのが最初。筑波大学出身で出版社での編集経験もあり、フラットで飾らない人柄に人気がある。介護業界には魅力的な人が多いということを話すと賛同してくれた。午後、日本の福祉現場力を高める研究大会に出席。もともとは東京福祉専門学校や埼玉福祉専門学校を傘下に持つ滋慶グループの卒業研究の発表会だったが、最近は学生たちが企画委員会を立ち上げて自主的にやっているらしい。そのためなのか、今年はメインタイトルが「介護がデザインする未来の社会」で内容も今日的で面白かった。私は2部からの参加となったが、「LGBTの介護」「介護と葬儀の連携」「ピープルデザインが描く『超福祉』」はいずれも興味深かった。LGBTとはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランス・ジェンダーの頭文字をとったものでセクシュアルマイノリティの人たちを指すらしい。講演した佐藤さんは都内の特養で働く男性介護士だが戸籍上は女性で、介護現場でもいろいろと苦労があるとのことだ。LGBTの当事者の話を聞けただけでも貴重な体験をさせてもらったと思う。閉会後のレセプションにも顔を出す。

2月某日
建国記念の日で休日だが、引き続き「介護マスト」の執筆依頼で休日出勤。長野県上田市で地域ケア総合研究所を主宰している竹繁さんと上野駅で会う。竹繁さんが午後、日立大田で講演があるので上野発11時の特急に乗るため上野駅での待ち合わせとなった。今回の介護報酬の改定に限らず介護の経営が難しさをますであろうという方向は竹繁さんと一致。現場の「悩める経営者にメッセージをお願いしたいと依頼した。

2月某日
厚労次官をやって現在は医科学研究所と県立埼玉福祉大学の理事長をやっている江利川さん、江利川さんと同期で江利川さんの後に年金局資金課長をやった川辺さん、そのときの課長補佐で去年まで支払基金の専務理事をやっていた足利さん、それに当時、年金住宅福祉協会の企画部長で現在は結核予防会の常務の竹下さんと会社の近くの「レストランかまくら橋」で呑み会。メンバーの看護大学の岩野さんは欠席。話題は元厚労省で大分大学教授の椋野美智子さんの大分市長選挙への出馬に。自民党はすでに元資源エネルギー庁の次長の出馬が決まっているとのこと。少子高齢化や地域包括ケアへの地方都市への対応ということでは、厚労省OBで研究者でもある椋野さんが適任と思うのだが。

2月某日
元社会保険庁で国民年金協会の専務理事だった河野さんと神田明神下の「章太亭」で6時から呑み会。寒いので日本酒の熱燗にする。河野さんは現在は完全にリタイアしていて週末は府中競馬場へ通っているそうだ。河野さんと初めて会ったのは、は河野さんが社会保険庁の年金保険課の庶務班長のときだから30年位前かもしれない。仕事上以外でもいろいろお世話になったというか、わたしの知っている社会保険庁OBの中では浅岡純朗さんなどと並んで異色で面白い人。

2月某日
土曜日だが残務処理で会社へ。ひと段落したのでオヤノコトマガジンの大澤社長に電話。今なら時間があるというので有楽町の交通会館へ。意見交換の後、高田馬場の社会福祉法人サンへ。10年位前、当社に勤めていた今泉友香さんに会う。今泉さんは社会福祉士の国家試験が終わったばかりで多少時間があるというので高田馬場の駅ビルの「文流」で食事。介護の世界についていろいろ教えてもらう。今泉さんと別れ我孫子駅前の「しちりん」でウイスキーのソーダ割り。

2月某日
図書館で借りた「悪い恋人」(井上荒野 朝日新聞出版 2014年12月刊)を読む。夫の両親と2世帯住宅に住む沙知に裏の森の開発計画がもたらされる。開発業者としてあらわれた高校の同級生と肉体関係を結んでしまう。こう書いてしまうと湿っぽい人妻の不倫小説となってしまうのだが、井上はあくまでも小説の登場人物とは距離を置くというスタンス。
現代の庶民の生活に潜む「闇」を鮮やかに切り取っていると私は思う。ところで井上荒野は井上光晴の娘で、私は20年位前にパーティで会ったことがある。井上光晴の娘と紹介されて「お父さんに似てますね」と私が言ったことを覚えている。井上光晴には会ったことはないけれど写真などで見ると、面長な顔に特徴があった。荒野も面長だった。井上光晴をネットで調べたら66歳で亡くなっている。今の私の年だ。当時の井上光晴は巨匠だったけどね。

2月某日
社会保険出版社に高本社長を訪問。厚生年金と共済年金の一元化に向けて意見交換。その後、日本橋小舟町の一般社団法人セルフケア・ネットワークへ。ここの代表理事の高本さんと社会保険出版社の高本さんは同姓だが、夫婦なので当たり前である。高本社長の紹介で高本代表理事を紹介された。セルフケア・ネットワークでは理事の城下さんを紹介される。高本代表理事とは今週、一緒に関西学院大学を訪問することになっているので、その打合せをする。その後、高本社長と寿司屋さんへ。「たぬき」というとぼけた名前の寿司屋さんだが、ご主人と思われる温厚そうな人が握ってくれる。遅れて高本代表理事と城下さんも参加。高本社長にご馳走になってしまう。「今夜も最高!」だったが、いささか日本酒を飲みすぎ。「こんなことをしていていいのだろうか?」という反省の気持ちが一瞬心をよぎるが、もちろんよぎっただけである。

2月某日
SMSの長久保さんと当社で打合せ。6時から打合せだったので終了後、当社の向かいにある「レストランかまくら橋」で食事。近くの酒屋「藤田屋」で購入した日本酒(日高見と出羽桜)、焼酎(壱岐の35度)を持ち込む。この日は根津のスナック「ふらここ」のママから「あやちゃん(常連客)が熊本の馬刺しを持ってきてくれるから吉武さん(元厚労省)を誘ってきて」と言われていたので、吉武さんも「レストランかまくら橋」に来てもらう。日高見と出羽桜を空け、壹岐を半分くらい呑んだところで「ふらここ」へ。馬刺しをいただく。さすがに美味い。

2月某日
朝、テレビのニュースでアメリカのオバマ大統領が「IS(イスラム国)の過激思想に青少年が影響されないように地域社会の再構築を」と言っていた(ように思う。集中して見ていなかったので)。私は少子高齢化社会を支えていくためには、税金や社会保険料による公助や共助だけでなく地域社会による互助が必要、と思っているからオバマの考え方には共感する。これからの社会を考えるのに必要なキーワードの一つは間違いなく「地域」だ。

2月某日
医療、福祉系の専門出版社の青海社の工藤良治社長とは我孫子駅前の呑み屋「愛花」で出会った。ママが「こちらも出版社の社長さん」と紹介してくれたのだが、工藤さんはすでに酔眼朦朧としていた。その後、根津の青海社を訪ねたり、一緒に呑んだことも何度かある。工藤さんのお酒は「好きだけれども弱い」のが特徴。焼酎をロックで呑んだりするのだが、すぐに酔ってしまう。その工藤さんが同社が隔月刊で発行する「臨床作業療法士」を毎号贈呈してくれる。最新号が送られてきたのでページを開くと印象が違う。特集「住民が主役のコミュニティづくり―作業療法士ができること」もいい視点だと思うし、新連載の「列島情熱作業療法」「勝手にOT番付」も面白かった。工藤さんに「面白かったよ」と電話したら、「デザイナーと編集委員を替えたの」という返事だった。「臨床作業療法」誌はお勧めです。