モリちゃんの酒中日記 8月その1

8月某日
ネオユニットの土方さんがHCMに来社。大橋社長と先月末で年住協を辞めた茂田君とが新橋駅前の「焼鳥センター」で吞むことになっているというので合流することに。「もう一人来ます」と大橋社長。しばらくすると若い女性が合流。「マニュライフ生命 高山恵莉」という名刺をもらう。福岡の高校を卒業した後、国立音大に進学、生保の営業職に就職したらしい。「焼鳥センター」では私はもっぱらホッピーを吞む。「ナカミ」(焼酎)は店の人がこちらの好きなだけ入れてくれる。久しぶりに若い女性と会話したこともあってのみすぎてしまった。

8月某日
国土交通省の伊藤明子住宅局長が内閣審議官に就任した。伊藤さんは京大建築学科出身の住宅技官。私が初めて会ったのは今から30年以上前、住文化研究協議会の月に一度の研究会のときだったと思う。彼女は建設省住宅局の住宅生産課の係長だった。兵庫県宝塚市に出向していたときも出張のついでに会いに行ったこともある。厚労次官をやった阿曽沼慎司さんがシルバーサービス対策室長だったときに「住宅と福祉」をテーマに座談会を企画したことがあった。阿曽沼さんは例によって「女が出るんなら出てもいいよ」という。住宅生産課の課長補佐だった伊藤さんにお願いしに行ったら「こういうのはバランスがあって厚生省が室長ならこっちもそのクラスでなければ」と渋る。当時、住宅局長だった那珂さんに言って何とか実現に漕ぎつけた。何回か一緒に吞みに行ったが、一度無断欠席されたことがある。翌日電話で「ごめん、仕事をしていたら行くのを忘れてしまって」と謝られた。それだけ仕事熱心ということだが、子どもを出産したときも出産間際まで電話で指示を出していたというエピソードもあるくらいだ。

8月某日
浅田次郎の「天切り松闇がたり」の第2巻「残侠」を読む。「天切り」というのは屋根を破って民家に侵入し盗みを働くことをいう。盗賊の「目細の安吉」一家に売られた松蔵は、やがて「天切り松」と呼ばれることになるのだろうが、第2巻では松蔵はまだ修業中の身、兄貴分からは「松公」と呼ばれる。表題作の「残侠」は清水次郎長の子分だった山本政五郎、人呼んで小政が目細の安吉一家に客分として現れ、一宿一飯の恩義からアコギな向島一家の親分はじめ主だった幹部を見事に切り捨てるというストーリー。勧善懲悪ほんとうにわかりやすい物語なのだが、特に「天切り松」シリーズは登場人物の台詞回しがいい。小政の切る古風な仁義。「親分は清水の山本政五郎、御一新の前に実子盃をいただきやした名前の儀は、政五郎と発します。ご覧の通り四尺七寸の小兵者につきまして、清水の小政の二ツ名をこうむりやす。天保の末年に命さずかりましてよりこのかた、弘化、嘉永、万延、文久、元治、慶応、明治、大正と、一天地六の賽の目稼業、はてしもねえ楽旅の流れ者ではござんすが、向後(きょうこう)お見知りおかれましては、宜しくお頼み申し上げます」という具合である。

8月某日
愛知県から「わがやネット」の児玉道子さんが上京、高齢者住宅財団の「財団ニュース」に「地域居住における高齢者支援の現状と課題」の連載が掲載されたので、財団の担当の小川さんにお礼に行くという。私は14時から社保研ティラーレで次回の「地方から考える社会保障フォーラム」の企画会議に出席、同じビルにある民介協の扇田専務に挨拶、携帯に社会保険研究所の鈴木社長から「近くにいるという話ですが」という電話。「じゃ寄ります」ということで社会保険旬報の編集部があるWTC内神田ビル3階へ。打ち合わせを終わって高齢者住宅財団へ。近くのプレハブ建築協会の合田専務を訪問。鎌倉河岸ビルの「跳人」へ行くと大谷さんがすでに来ていた。年友企画の迫田さんを呼び出して4人で乾杯。アイリッシュウイスキーの「ジェムソン」を呑む。我孫子へ帰って「愛花」に寄る。勘定を払って帰るときに常連の佳代ちゃんに会う。

8月某日
林真理子の「最高のオバサン 中島ハルコの恋愛相談室」(文春文庫 2017年10月)を読む。中島ハルコは52歳。バツ2の女性経営者、旅行先のパリでフードライターの菊池いづみと知り合う。毒舌家でドケチの中島ハルコだが、その本音で生きる姿勢にいづみは次第に魅かれていく。ハルコもハルコを観察するいづみも林真理子の分身、いづみがフードライターだけに食事シーンも出色。