モリちゃんの酒中日記 11月その3

11月某日
本日は10時30分からマッサージ、30分で終えて11時15分から石戸歯科クリニックへ。前回は50%以上あった歯磨きの磨き残しが25%になっていた。13時30分から社保研ティラーレで打ち合わせだったが20分以上遅刻してしまった。次回の「地方から考える社会保障」フォーラムの検討をしたが、吉高会長は新しいビジネスを構想しているようで、フォーラムは12月になったらまた検討することにする。16時から日暮里の「ばんだい」で大谷さん神山さんとの会食。神山さんにはいつも石巻の銘酒などを貰っているので、御徒町の松坂屋で日光カナ屋ホテルのバームクーヘンを購入。16時に「ばんだい」に入ると二人はもう来ていた。「ばんだい」にはベトナム人の美人バイトがいた。マスクをしているからか、女の人がみんな美人に見えてしまう。

11月某日
春日部駅で13時に小中高と一緒だった山本良則君と待ち合わせ。山本君の車で駅からちょっと離れたコメダ珈琲店へ。山本君はコーヒーとハンバーガー、私はポテトサラダサンドとコーヒーを頼む。ポテトサラダサンドは私にはちょっと量が多かった。コメダ珈琲には1時間以上いた。話すこともあまりないのだが、幼馴染というのはそこにいるだけでいいものだ(個人の感想です)。山本君から自分で作った里芋を渡される。山本君に東武伊勢崎線の「せんげん台駅」まで送って貰う。北千住で常磐線に乗り換えて上野駅へ。神田駅北口で17時30分に石津さんと待ち合わせだがまだ時間があるので神田駅近くの喫茶店で時間をつぶす。
17時30分に石津さん登場。神田駅界隈で前に行ったビストロを捜すが見当たらないので近くの「神田新八本店」へ。私は最初から日本酒、石津さんは生ビール。呑んだり食べたり喋ったりであっという間に時間は過ぎてお開きに。

11月某日
「未来」(湊かなえ 双葉文庫 2021年8月)を読む。湊かなえの小説を読むのは初めて。帯に「万感胸に迫るラスト、渾身の長編ミステリー」と刷り込まれていた。確かに読ませることは読ませるのだが。どうもリアリティに欠ける印象が。特に後半ね。複数のストーリーが交錯するのだが、私の頭が悪いのか関連付けるのが困難だった。

11月某日
山本良則君が貸してくれた「長男の出家」(三浦清宏 1988年2月 福武書店)を読む。三浦清宏は室蘭出身の小説家で1988年上期の芥川賞を本作で受賞している。「私」、妻、長男、長女という家族構成の一家が長男の中学生が出家を決意し、実際に禅寺に出家することによる家族の動揺、変容を描いている。この小説はおそらく三浦の実体験にもとづいている。この長男はどうなったのだろうか?三浦には「海洞」という室蘭を舞台にした長編小説がある。もう一度読んでみようと思う。フジテレビの「ザ・ノンフィクション」を観る。今回は立川談志の晩年の姿を談志自身や息子や娘の撮影で映し出す。談志は「落語は業の肯定である」と書いているが談志の人生そのものが業の追求であったと思う。咽頭がんが進行し死の直前までカメラを拒むことはなかったという。生前の西部邁と親交があったが、二人とも業が強そうだ。

11月某日
週に2回、近所の鍼灸マッサージに通っている。家を出て2~30メートル歩くと後ろから「おじいちゃん」と声を掛けられる。ふり向くと私よりも年上そうな女性が「おじいちゃん、大丈夫ですか?」と、気遣ってくれる。確かに私は脳出血の後遺症で右半身にマヒが残り、足を引きずって歩く。だけれど日常生活で他人の介助を受けたことはない。「ありがとうございます。すぐそこのマッサージ屋さんですから大丈夫です」と答えると、女性はさらに「ついて行きましょうか?」と聞くではないか。これも丁寧にお断わりしたが、傍から見ると私の歩行姿は介助が必要なんだといささかショックであった。

モリちゃんの酒中日記 11月その2

11月某日
社会保険福祉協会の「保健福祉活動支援事業」運営委員会に参加。社福協が実施している「福祉活動」について報告を受け、意見を言うことになっている。私以外は「ひつじ雲」の柴田理事長など介護事業の専門家であり、私などの出る幕はないと思うのだがあと2年、委員の任期が残っているのでそれまでは続けようと思う。新しく医院となった宮川路子さんを紹介される。宮川さんは慶應大学出身の医学博士で現在、法政大学人間環境学部の教授。社福協からの帰り、虎ノ門まで少し話すことができたが、とても気さくでそれでいて教育には熱意を持っているようである。虎ノ門で宮川さんと別れ私は日土地ビルのフェアネス法律事務所へ。渡邉先生から経過報告を受ける。遠藤代表弁護士からは今度出す本のゲラ刷を見せられる。年友企画の迫田さんとその後、呑む予定だったが迫田さんの都合がつかず延期。今日の晩御飯はいりませんと言ってあるので我孫子の北口の居酒屋で一人酒。

11月某日
昨日に引き続き東京へ。本日は社保研ティラーレで「地方から考える社会保障フォーラム」の会議。吉高会長、佐藤社長、社会保険研究所の総務部長と水野氏が参加。フォーラムはおおむね年間3回、3コマで実施することで合意。次回のだいたいの構想について私がまとめてくることになった。社保研ティラーレを出て神田駅に向かうと「森田さん」と声を掛けられる。HCM社の大橋会長である。事務所へ帰る大橋さんと上野駅までご一緒する。土方さんを入れて忘年会をやることで一致した。上野駅からはちょうど来た特別快速に乗車。日暮里の後は北千住まで止まらない。我孫子にも止まらないので柏で下車。高島屋の地下2回の酒売り場によって国産のジンを買う。柏駅北口の「庄屋」で一杯。

11月某日
「しごと放浪記-自分の仕事を見つけたい人のために」(森まゆみ インターナショナル新書 2021年8月)を読む。森まゆみは1954年生まれ、73年に早稲田大学政経学部政治学科に入学。私は72年に卒業だからキャンパスですれ違ったこともない。私は森まゆみの良い読者とは言えないが「彰義隊遺聞」などを楽しく読んだ記憶があるし、彼女たちが発行していた地域雑誌「谷根千」は何冊か買った記憶がある。30年以上前だが「年金と住宅」という雑誌の編集をしていたとき「古地図を歩く」という連載の取材で谷中の大円寺を訪れた。菊人形が展示されていたがその傍らで「谷根千」が売られていた。売っていたのは本文中に出てくる山崎範子だった。森は大学を卒業後、PR会社と出版社に2年務めた後フリーに。地域活動や景観保存活動、反原発の活動にも取り組む。離婚も経験した。この本を読むと、森まゆみは自立した市民の先駆けであると思う。岩波文庫の「伊藤野枝集」は森まゆみの編集である。あまりお金になりそうもない地味な仕事もきちんとやっているのである。

11月某日
「ハコブネ」(村田沙耶香 集英社文庫 2016年11月)を読む。初出は「すばる」2010年10月号、単行本化されるのは2011年11月である。村田は1979年生まれ、2016年に芥川賞を受賞しているが、その前に03年に野間文芸新人賞、13年に三島由紀夫賞を受賞している。ファミレスでバイトする19歳の里帆は異性とのセックスが辛い。自分の本当の性は男ではないかと疑う彼女は、乳房の存在を極端に抑えた服装で自習室に通い始める。そこで出会うのは女であることに固執する31歳の椿とその友人で生身の男性と寝ても実感が持てない知佳子だった。LGBTQなど性的な多様性に関心が集まったのはこの5年ほどのことではないか?村田が本書で描きたかったのは性の多様性、不可思議性なのではないかと思う(自信はないけれど)。村田の小説を読むといつも「ちょいと理解できないな」感が付きまとう。でもまた読んでしまうんだよなぁ。

11月某日
瀬戸内寂聴さんが亡くなった。99歳だった。私は昨年、村山由佳が伊藤野枝の生涯を描いた「風よ、嵐よ」を読んで以来、明治大正期のアナキストに興味を抱き、瀬戸内寂聴の「美は乱調にあり」「諧調は偽りなり」(伊藤野枝と大杉栄)、「遠い声」(菅野須賀子)、「余白の春」(金子文子)を読んだ。菅野須賀子は大逆事件に巻き込まれて刑死、伊藤野枝は大杉とともに憲兵隊に虐殺され、金子文子は刑務所で自死した。まぁ三人とも非業の死である。瀬戸内は天寿を全うしたと言える。瀬戸内は出家する前、作家の井上光晴と不倫関係にあった。それを赤裸々に描いたのが井上の娘、井上荒野の「あちらにいる鬼」である。「あちらにいる鬼」を巡って瀬戸内と井上荒野が楽しそうに対談していた。こだわらない人であり、誰とでも対等に話をできる人だったと思う。

モリちゃんの酒中日記 11月その1

11月某日
図書館で借りた「やさしい猫」(中島京子 中央公論新社 2021年8月)を読む。家族の話である。シングルマザーとその一人娘、そしてのちにシングルマザーの夫となる男の物語。まぁ今どきどこにでも転がっているはなしではある。フツーと少し違うのはシングルマザーの夫となる男がスリランカ出身の外国人であることだ。中島京子の作品には戦時下と戦後のある家族の変遷を描いた「小さいおうち」、認知症の家族を描いた「長いお別れ」などがある。家族が家族であるということの幸せと困難性がテーマ。「やさしい猫」で描かれる幸せは、東日本大震災のボランティアを通して知り合ったシングルマザーと男が東京で再開し、魅かれあっていく。シングルマザーの娘(物語の語り手)とも深く結びついていく。
困難性とはこの作品の場合、夫となる男が外国籍であることに起因する。日本は、日本人は外国人、それも非欧米系の外国人に冷たい。「やさしい猫」でも日本の厳しい入国管理局体制が描かれている。外国人であるが故に基本的な人権さえ奪われている現実がある。そういえばこの3月、入管施設でスリランカ人女性が医療につないでもらえず亡くなった。この本には「多くの人の予約が入ってます」という赤い紙が貼ってあった。私もたくさんの人に読んでもらいたい本と思うから、これから図書館に返してきます。

11月某日
地方議員向けの第25回の「地方から考える社会保障フォーラム」に参加。会場の日本生命丸の内ガーデンタワーに10時過ぎに到着。いつもは10時過ぎまで寝ているが、今日は7時頃起きるつもりが8時の起床となってしまい、朝食をとらずに電車へ。今回のスピーカーは樽見前厚労次官、医療的ケア児支援法の成立と今後の課題について厚労省障害福祉課の河村のり子室長、行政のデジタル化と厚労行政について情報化担当参事官の山内孝一郎。樽見さんは「新型コロナ対応は『行政機能の試金石』だったのではないか」としたうえで、「ワクチン接種では地方自治体の底力を見た」と語っていた。河村さんは医療的ケア児とその家族が置かれている現状について丁寧に説明してくれた。資料には「当事者の想い」も掲載されていたが河村さんは「読むと泣いてしまうので今日は読みません」。きっとやさしい人なのだろう。山内さんはデジタル化についてわかりやすく説明してくれたうえに議員の質問にも誠実に答えていた。今回のフォーラムはスピーカーの人柄があらわれて、なかなか良かったと思います。
フォーラム終了後、元厚労省の堤修三さんと会うことになっているので霞が関へ。待ち合わせ場所の飯野ビルの蕎麦屋へ行くと堤さんはすでに来ていた。遅れて大谷源一さんも参加。堤さんは外で呑むときはノンアルコールビール。私は生ビールから日本酒、大谷さんは生ビールから焼酎。2時間ほどおしゃべりして大谷さんは東京駅まで歩き、私は霞が関から千代田線、堤さんは同じく霞が関から日比谷線で帰る。

11月某日
「官邸の暴走」(古賀茂明 角川新書 2021年6月)を読む。古賀は元経産官僚ながら安倍菅政権に対して批判的な発言を繰り返している。古賀は安倍や菅の統治能力自体は低いとみている。そのうえで官邸官僚(首相補佐官など)が政策決定で力を持ち、各省庁の官僚の力が低下したと見ている。それはそうだと思うのだが、私は安倍菅政権の最大の問題は国会の軽視だと思っている。安倍は首相のとき、野党議員の質問に野次っていた。品位にかけるし国会議員は野党と言えども国民の代表である。国会に対して謙虚な対応が望まれる。

11月某日
図書館から借りた「安藤昇-侠気と弾丸の全生涯」(大下英治 さくら舎 2021年8月)を読む。安藤昇は1926年、東京新宿生まれ。子供のころから素行が悪く少年院に収監されるも予科練を志願、伏龍特攻隊に配属され、2カ月後に終戦。46年に法政大学予科に入学するが翌年除籍、周囲の不良少年たちのリーダーとなり、後の安藤組に発展する。安藤組や安藤昇については本田靖春の「疵・花形敬とその時代」で読んだことがあるが、安藤組解散後についての安藤昇について読んだのは初めて。ヤクザを演じさせると独特の迫力があったと言われているが、本物だったのだから当たり前と言えば当たり前だ。奥さん以外にいつも何人かの愛人がいた。とにかく女性に持てた。それも自分からアプローチするのではなく女性に惚れられたそうである。