モリちゃんの酒中日記 7月その3

7月某日
床屋さん「カットクラブパパ」へ行く。以前行っていた「髪工房」が突然、閉店したのでこのところ「カットクラブパパ」へ行っている。髪工房の店主は私よりも年上だったが、カットクラブのほうは私よりもだいぶ若い。今回も髪を短めに仕上げてくれる。終ってから床屋近くの食堂「三平」へ。ここは年配のご婦人が数人でやっている昔ながらの食堂。五目チャーハンを食べる。5時30分に我孫子駅北口へ立憲民主党の岡田克也幹事長が演説に来るというので観に行く。30分ほど前に行ったがすでに数十人が集まっていた。圧倒的に高齢男子が多い。政治に背を向ける若い人たち。日本の将来は大丈夫か?岡田幹事長の演説は可もなく不可もなし。

7月某日
「東京史-七つのテーマで巨大都市を読み解く」(源川真希 2023年5月 ちくま新書)を読む。東京は明治維新後に日本の首都となり、関東大震災、東京大空襲を経ながら膨張を続けてきた。無秩序な膨張を繰り返してきたように見えるが、内務省や東京市によってそれなりの規制を受け、都市計画も存在した。にしても東京の魅力とは何であろうか? 西欧的な秩序とアジア的な混沌。この二つの混在か。

7月某日
「我が産声を聞きに」(白石一文 講談社 2021年7月)を読む。「来週の木曜日、空いている?」と夫の良治に言われ、名香子は夫とともに車で中華レストランを訪れる。食事を終えてデザートを食べているとき、夫から切り出されたのは「実は好きな人がいる、彼女と暮らすことにした」という別れ話だった。自宅その他の財産も、退職金の半分も名香子に渡すという。こんなこと突然、配偶者から言われたらショックだろうなぁと思う。名香子もそうだった。しかし名香子はショックを契機に徐々に変わっていく。飼い猫のエピソードが効いている。二番目の飼い猫ミーコは失踪してしまうのだが、ラストでは庭に迷子猫があらわれるシーンだ。子猫が再生のシンボルのようだ。

7月某日
「投身」(白石一文 文藝春秋 2023年5月)を読む。舞台は2022年の東京、品川。主人公の49歳の女性、旭(あきら)は「ハンバーグとナポリタンの店 モトキ」を品川区役所の近くで営業している。コロナ禍で客足は遠のいている上にロシアのウクライナ侵攻で食品の仕入れ値が高騰し、経営は苦しい。しかしモトキの常連でもある大家の二階堂さん(79歳)が家賃を格安に抑えてくれているので何とか赤字は免れている。旭の妹、麗、麗の夫の藤光との交流(実際は旭と藤光の性交を伴う交情)やかつての旭と年下の専門学校生、ゴローとの性交を伴う交流が描かれる。まだ周囲には知られていないが、二階堂さんは認知症を患っている。結局、二階堂さんは東京湾に船を出し、投身自殺をする。私は多摩川で入水自殺した西部邁のことを思い出さずにはいられなかった。西部は認知症ではなかったが、自身の老いが耐えられなかったということでは二階堂さんと共通するところがある。さらに二階堂さんも西部も妻を先に喪っている。そういえば、江藤淳も奥さんが亡くなった後に自殺している。男って弱いんだな。