6月某日
「日銀の限界-円安、物価、賃金はどうなる?」(野口悠紀雄 幻冬舎新書 2025年1月)を読む。著者の野口悠紀雄は1940年生まれ。今年、85歳になるのだが、その経済を見る目の確かさはいささかも衰えない。本書における野口の考え方を私なりに要約すると、まず円安は日本を弱くする。円安で企業の利益は増えるが、それは企業が輸入物価の上昇を販売価格に転嫁しているからで、円安による企業の利益増は消費者の犠牲により生まれている。円安によって外国人労働者を確保できなくなり、国際競争から脱落していく可能性もある。外国人労働者の確保のために、韓国は永住権の付与に積極的だが日本は遅れをとっている。米国への留学生も、韓国の4万9755人に対して日本は1万3447人である。1人当たりGDPでも(単位:万ドル)、日本は4.1に対して、アジアではシンガポール10.6、台湾4.3、韓国4.2である(ちなみにアメリカ10.1、イギリス6.7、ドイツ6.4、フランス5.4、イタリア4.5で、G7のメンバーで最低)。円安効果で大企業の収益は増大しているが、それは企業の利益として蓄積され労働者に還元されない。昨年、今年と賃上げ率は高かったが、それは主として大企業の労働者や公務員で、中小、零細企業の労働者やフリーターには及んでいない。ジャパンアズナンバーワンは遠い過去のものとなってしまった。物価の上昇に賃金が追いついて行かない。著者が指摘するのは労働生産性の向上が進んでいないこと。企業の投資が伸びていないし、高等教育も生産性の向上と結びついていない。どうするニッポン!
6月某日
上野の国立科学博物館に「特別展 古代DNA-日本人のきた道-」を観に行く。今度の日曜日(6月15日)が最終日とあって、ウイークデーにもかかわらず結構な人であった。展示物にカメラを向ける人、説明文をメモする人と熱心な老若男女が多かった。私はテーマに興味はあるのだが、人混みを避ける性向があるので展示物は後ろから垣間見る程度であった。その替わり解説パンフレットを2500円で購入、あとでじっくり勉強するつもりだ。実は身体障害者手帳を見せると入場料2500円が免除される。免除された2500円でパンフレットを購入したとも言える。
6月某日
午前中、アビスタ前から坂東バスに乗車、終点の我孫子駅前の一個手前のバス停、八坂神社前で下車、理髪店「カットクラブパパ」へ。お客がいなかったので早速、調髪。料金は今年から500円上がって4000円に。帰りは歩きで我孫子図書館に寄り、週刊文春と週刊新潮を軽く読んで、リクエストしていた本を受けとって帰宅。
6月某日
「歳月」(茨木のり子 岩波現代文庫 2025年5月)を読む。茨木のり子(1925~2006年)は現代詩人。8歳年上の夫の医師、三浦保信とは1975年に死別している。本詩集は彼女の夫への挽歌である。詩の原稿は彼女の死後、Yと表書きされたボール紙の箱から発見された。茨木のり子は私の母親などと同世代だが、彼女の詩には自立などの戦後の価値観を強く感じさせるものが多い。本詩集でも夫への感情を素直に綴っている。「なれる」と題された詩を抜粋しよう。
なれる
おたがいに
なれるのは嫌だな
親しさは
どんなにふかくなってもいいけれど
三十三歳の頃 あなたはそう言い
二十五歳の頃 わたしはそれを聞いた
今まで誰からも教えられることもなくきてしまった大切なもの
おもえばあれがわたしたちの出発点であったかもしれない
(後略)