モリちゃんの酒中日記 2月その1

2月某日
「人はなぜ他者を差別するのか―排除と差別、そしてヘイトの現在地」(森達也編著 論創社 2025年12月)を読む。森達也は「差別という「呪い」について」というタイトルの論稿で次のように述べている。「差別やヘイトは「集団の圧」から生まれる。普通の人々が恐怖や不安に駆られて「他者」を排除する。それはオウム信者に対する排斥運動であり、関東大震災時の朝鮮人虐殺であり、現代のSNS上の罵詈雑言だ。僕たちは常に「正義」の名の下に誰かを傷つけている」。日中戦争下の南京での虐殺や強姦を行ったのも普通の兵士だった。朴順梨という人は新井将敬について触れている。新井将敬と言っても今や知る人も少ないと思う。1948年1月に大阪で在日韓国人として生まれ、後に日本に帰化、東大卒業後、新日鉄、大蔵省を経て、自民党公認で衆議院選挙に出馬して1986年以来、12年間国会議員を務める。証券会社への利益強要罪に問われ、品川区内のホテルで縊死。自民党の国会議員でも差別に苦しむ。この国の差別意識の強さに改めて驚く。新井が自殺したのは1998年の2月、今から30年近く前だ。しかし外国人が増え続ける現在、外国人ヘイトは続く。外国人労働者がいなくなったら、困るのは日本人なのに。

2月某日
「シオニズム-イスラエルと現代世界」(鶴見太郎 岩波新書 2025年11月)を読む。シオニズムは「19世紀終盤のロシア帝国領で生まれ、「ユダヤ人の民族拠点をパレスチナに築くことを目指す思想・運動」と定義される。第2次世界大戦中のドイツで多くのユダヤ人が財産を没収され虐殺された。また旧ロシア帝国、旧ソ連でもユダヤ人は迫害された。東ヨーロッパ、ヨーロッパ全体にわたってユダヤ人は差別されてきた歴史がある。第2次世界大戦後、迫害を逃れたユダヤ人が自宅にたどり着くとそこには知らない人が住み、権利を主張されたという。迫害されたユダヤ人が目指したのがパレスチナだった。しかしそこはアラブ人が暮らしていた土地だった。本書ではイスラエルの建国は「入植者植民地主義」に分類されている。「アメリカやオーストラリアのように、先住民の土地を収奪しながら、彼らを取り込むよりも排除して自分たちだけの社会を構築していく」のが入植者植民地主義で北海道開拓や満蒙開拓もその例だ。シオニストのパレスチナ入植もこのタイプに分類される。著者はシオニストのパレスチナ入植に批判的だ。そしてそれを支援した米英などの先進資本主義国、さらにユダヤ人虐殺への負い目からイスラエルを積極的に支援するドイツに対しても批判的だ。

2月某日
新松戸駅改札で小中高と学校が一緒だった山本君と待ち合わせ。1時間ほど早く着いたので新松戸駅周辺を散歩。新松戸は常磐線と武蔵野線が乗り入れているため乗降客は我孫子駅よりかなり多いのではないか、飲食店の数も種類も多いようだ。新松戸駅付近で山本君と合流、駅近くの日高屋へ。私はビールとウイスキーの水割り、山本君はビールと日本酒。山本君は武蔵野線で、私は常磐線で帰る。

2月某日
「明治維新10講」(三谷博 岩波新書 2025年12月)を読む。近世の日本には2人の君主がいた。江戸の将軍(公儀)と京都の天皇(禁裏)である。これは世界史でも極めて珍しい現象で18世紀のベトナムで短期間あったという。江戸時代の日本は約270の藩で構成されていた。これにより著者は江戸時代の日本を「双頭・連邦国家」と呼ぶ。幕府と将軍には権力があり、天皇と公家には権威があった。幕末にはにわかに尊皇の気風が高まり、天皇から幕府に使わされた勅使の江戸城内の位置づけも変化したという。明治維新というとその性格を封建体制からの絶対主義体制への移行(講座派・日本共産党系)と見るかブルジョア立憲体制への移行(労農派・後の新左翼系)と見るかという論争があったが、三谷はまったく触れていない。もうそんな時代ではないということか。

2月某日
衆議院選挙、自民党が定数の三分の二を超える圧勝。立憲と公明が合同した新党は振るわず。投票率がいくらか上昇したことと、支持政党なしの浮動票の多くが高市自民党に流れたものと思われる。国民のバランス感覚が一時的に自民党に向かったのではないか。先進国に見られる右傾化とは少し違うように思えるが。しかし参政党の伸張は不気味ではある。