モリちゃんの酒中日記 4月その2

4月某日
高田馬場栄通の「清龍」で大谷源一さんと。高田馬場での会議が長引き、18時半には行けるはずだったが19時半を過ぎていた。「清龍」は埼玉県蓮田市の清龍酒造が経営する居酒屋。「安くて美味しい」と言ってよいと思う。高田馬場店のウエイトレスは私の見た限り外国人。おそらくは中国と中南米系、一生懸命働く姿は感じが良い。我孫子に帰って駅前の「愛花」に寄る。福田さんとケイちゃんが来ていた。ケイちゃん持参の日本酒を頂く。

4月某日
HCM社の大橋社長と新橋から上野-東京ラインで赤羽へ。友人の李さんが社外スタッフとして協力している蓼科情報㈱へ。李さんが30分ほど遅れてきたのでそれまで世間話。李さんが来たので打ち合わせ開始、終了後、李さん、大橋さん、私の3人で赤羽で呑むことに。5時前なのでまだやっている店は少なかった。赤羽の居酒屋としては割と小奇麗な店に入るとすでにサラリーマンらしき人たちが何組か入っていた。ビールと焼き鳥、「梅水晶」「キムチ」などを頼む。ビールの後はホッピー。2時間ほど呑んで食べて会計はひとり3000円に行かなかった。安い!盛り場としての赤羽は居酒屋の数が多いのが特徴、それだけ競争が激しいのである。

4月某日
図書館で借りた「路上のX」(桐野夏生 朝日新聞出版 2018年2月)を読む。真由は高校1年生、レストランを経営していた両親が夜逃げ、真由は叔父(父の弟)の家に、弟は伯母(母の姉)に預けられる。真由は叔父の妻と折り合いが悪く、家出して渋谷の中華料理店でアルバイトをすることに。休憩室で寝泊まりするがある夜、チーフに犯される。バイト先も失った真由が会ったのがJKビジネスをやっているリオナ。リオナはヤンキーの母と同居していたが義父に毎晩のように性的虐待を受け、家出する。リオナはJKビジネスの客だった東大生の秀斗のマンションに性的サービスと交換に同居している。同居には真由にリオナの二人にリオナの友達で育児放棄されたミトが加わる。ミトは同棲相手に妊娠させられたうえ捨てられたのだ。桐野夏生の「奴隷小説」(文春文庫 2017年12月)の解説で政治学者の白井聡が、桐野夏生の作品は平成のプロレタリア文学と言っていたことを思い出す。桐野文学の本質を突いているように感じられる。「現代作家のうち、桐野氏こそ『階級』に、『搾取』に、より一般的な言い方をすれば『構造的な支配』に、最も強くこだわっている書き手ではないだろうか、と私は思うのである」(「奴隷小説」解説)。しかし小説のエンディングは意外にも真由とリオナの未来を感じさせるLINEであった。

4月某日
児童虐待防止のための勉強会に出席。これはケアセンターやわらぎの石川はるえ代表の呼びかけで始まったもので今回は2回目。やわらぎの南阿佐ヶ谷のデイサービスが会場。出席者は3つのテーブルに分かれて着席。私はフリー編集者の浜尾さんの隣に座る。一通りの自己紹介が終わった後でNPO法人Child First Labの高岡昂太さんが「今後の日本における子ども虐待の対応」についてレクチャー。児童相談所での対応件数は1990年から2015年で約100倍になっているにもかかわらず児相職員の配置数は1999年から2015年で約2倍にしかなっていないことを指摘、虐待などの通告が急増しているにもかかわらず、手が回らない実態を説明し、児相と司法や警察との連携の必要性を訴えた。具体的には「児童保護局・子ども権利擁護センター」を設置し「司法・医療・福祉が協働し、対応を効率化するシステム」の構築を提案していた。驚いたことに高岡さんは国立研究開発法人産業技術総合研究所の人工知能研究センターに所属、名刺によると「確率モデリング」というのを研究しているらしい。

4月某日
李さんがオリジナルで検討している「年金受給者情報」のチェックシステムについて社会保険庁OBの浅岡淳朗さんの意見を伺う。浅岡さんは飯田橋の厚生年金病院に用があるというので西新橋のHCM社に来てもらう。浅岡さんは李さんの説明を聞いてからいろいろ貴重なアドバイスをしてくれる。印象的なのは浅岡さんの「政策っていうのは論理で組み立てられている。そのとき政策を作っている奴らの頭には現場のことは浮かばない。だからいかに精緻な論理な論理で組み立てられた政策でも、現場でとても実施しずらいということがまま起きるのさ」という言葉。なるほどねー。あらゆる政策は実施されてこそ意味がある。政策を実施するのはあくまで現場。現場の意見を聞け、ということなのだろう。新橋から神田へ。西口通り商店街の「磯じまん」という店でフィスメックの小出社長と社会保険出版社の高本社長と呑む。小出社長から「魚と日本酒のおいしい店」と聞かされていたが、その通りのお店で、店長のおすすめのままに呑む日本酒がどれも個性的であった。小出社長にすっかりご馳走になる。