モリちゃんの酒中日記 2月その4

2月某日
図書館で借りた「無敗の男-中村喜四郎全告白」(常井健一 文藝春秋 2019年12月)を読む。「無敗」の意味は中村が昭和54年の第34回総選挙で衆議院議員に当選して以来、栃木県黒羽刑務所に収賄罪で収監されていた第43回総選挙を除き、平成29年の第48回総選挙まで一度も落選したことがないことを示している。中村は平成6年にゼネコン汚職で逮捕されるまで政治家として2度の入閣を果たすなど、恵まれた経歴を誇っていた。それは若くして経世会(田中派)で頭角をあらわした中村の政治センスに依るが、それを支えたのは地元をオートバイで行脚し、ときには5000人規模の個人演説会を満席にするという日常の政治活動であることが本書によって明らかにされる。中村は逮捕後は自民党を離れ無所属となっているが、それでも選挙では圧倒的な強さを発揮する。選挙は選挙民の政治的な選択だが、中村の選挙は少し違うように思う。多くの中村支持者は立候補者の中から中村を選んでいるのではない。選挙の前から、10年も20年も30年も前から、投票用紙には中村と書くことに決めているのだ。中村は現在、自民党の一党支配を覆すために共産党を含めた野党の連携に邁進している。1949年生まれだから私より1歳下だが、この政治家の動きに期待したい。

2月某日
「未練-女刑事音道貴子」(乃南アサ 新潮文庫 平成17年2月)を読む。単行本が刊行されたのが平成13(2001)年だから20年前の作品。6編の短編が納められているが、「立川古物商殺人事件」では被害者の49歳の古物商が元学生運動家と設定されているのも時代を感じさせる。「学生運動家」なんて今では死語だよね。それはともかく私は「聖夜まで」を切なく読んだ。音道貴子の先輩の警察官、添田知世を巡ってストーリーは展開する。知世の娘が通っている保育園で幼女が砂場に埋められて殺害される。犯人は知世の小学生の息子なのだが、それで終わらないのが乃南アサの凄いところ。知世は実の子どもたちに虐待を繰り返していた。知世を訪ね知世を問い詰める音道。虐待を否定し続けていた知世も「どこで-失敗しちゃったのかなぁ」と認めはじめる。「ちょっと、頭が痛くなってきちゃった」と2階に休みに上がる知世。入れ違いに帰宅した知世の警察官の夫に対して、夫の家庭への無関心が事件を呼んだのではないかと指摘する。「知世」と叫んで2階に駆け上がる夫、夫が見たのは首吊りを図った妻の姿だった。野田で小学生の少女が虐待死したのは去年だったか。この事件を予見したような作品だが「切ない」ね。

2月某日
午前中、厚生労働省の受付で年友企画の酒井佳代さんと待ち合わせ、老健局振興課を介護職へのハラスメント対策を取材。三森さんという係長が取材に応じてくれた。厚労省も事業所への広報を推進する一方、相談窓口の設置など力を入れるとのことだった。取材後、年友企画に行ったら総務の石津さんから立て替えていた出張費が渡される。この出張費で「飲みに行こう」と誘ったら「いいよ」との返事。夜、神田駅の北口で待ち合わせ。酒井さんと石津さんの3人で東口の「BISTRO TARUYA」へ。石津さんはビール、私は白ワイン、酒井さんはウーロン茶で乾杯。コロッケやムール貝、牛肉の赤ワイン煮などを楽しむ。

2月某日
元厚生労働省の江利川さん、川邉さんを囲む会を神田の上海台所で開く。もともとこの会は厚生省の年金局資金課長だった江利川さん、川邉さんと当時の課長補佐、足利さんと岩野さん、当時の年金住宅福祉協会の企画部長だった竹下さん、それと私というメンバーで始まった。それに川邉さんの次の資金課長の吉武さんや医系技官の亀井さん、厚生省から衆議院法制局に出向していた茅野さん、それからSCNの高本さんなどが加わった。本日は足利さん、岩野さん、亀井さん、茅野さんが欠席。社会保険旬報の手塚さんも所用で欠席ということだったが、挨拶だけということで顔を出してくれた。本日は年友企画の酒井さん、滋慶学園の大谷さん、SCNの高本さん、社保険ティラーレの佐藤さんの7人の出席となった。飲み放題付で一人3000円はお得。

2月某日
図書館で借りた「5年目の魔女」(乃南アサ 新潮文庫 平成17年7月)を読む。物語は会社を辞めた景子が会社を辞めた解放感いっぱいに目覚めるシーンから始まる。しかし景子の解放感もかかってきた電話によってもろくもしぼんでしまう。電話はかつての同僚、貴世美からのものだった。景子が会社を辞めた理由は貴世美にある。それにも関わらず貴世美は自身の病気のことや、母親の不在を訴えてくる。「二度と電話してこないで」と恵子は電話を切る。5年後、恵子はインテリアデザイナーになっている。同僚の飯田と一緒に日本橋の老舗の若社長の自宅の建て替えの打ち合わせに向かう。若社長の後妻に収まっていたのは貴世美だった。この時点では魔女は完全に貴世美の方である。しかし最後に大どんでん返しが用意されている。うーん、乃南アサ恐るべしである。