モリちゃんの酒中日記 4月その4

4月某日
「決定版 日中戦争」(新潮選書 波多野澄男 戸部良一 松元崇 庄司潤一郎 川島誠 2018年11月)を読む。ロシアのウクライナ侵攻が進む現在、戦前の日本帝国主義の満洲を含む中国大陸の侵略はどうだったか、興味を抱いたためである。ロシアがクリミア半島を自国領土としてウクライナから奪い、東部に親ロシアの共和国政権を樹立したまでは、日本の満洲国建国までと非常に似通っていると思う。満洲国建国以降、日本は中国大陸で蒋介石軍(中華民国軍)と紅軍(中国共産党軍)との戦闘を続けることになる。私の見るところ現在のウクライナ情勢は満洲国建国当時の状況に似通っていると思う。日本は国際的に孤立し、国際連盟を脱退する。ロシアも国際的な孤立を深めてはいるが、中国はロシアに手を差し伸べようとしているし、インドも米欧などの対ロシア制裁に同調しようとはしていない。冷戦構造が崩れてから初めての世界戦争の危機とも言える。バイデン大統領は早々と軍事力の行使はしないと表明している。プーチンの思う壺ではないかとも思えるのだが。

4月某日
第26回の「地方から考える社会保障フォーラム」。会場は従来と同じ日本生命丸の内ガーデンタワー。今回は山本麻里(厚労省社会・援護局長)さんの「コロナ禍の経験を踏まえた地域共生社会の実現、鳥井陽一(会計課長)さんの「22年度の厚労省予算」、川又竹男(大臣官房審議官)さんの「子ども家庭政策の現状と課題」。終ってから同じビルの2階のタイレストラン「メナムのほとり」で有志と会食する。

4月某日
社保研ティラーレで「社会保障フォーラム」の反省と次回の打ち合わせを佐藤社長、吉高会長と。社保研ティラーレは今週、引っ越しとのこと。神田駅で小学生以来の友人の佐藤正輝、山本良則プラス高校時代の友人、中田(旧姓)志賀子、大郷、小川と待ち合わせ。予約してあった「上海台所」へ向かう。正輝は札幌でITの会社を経営しており、元NECの大郷はその会社を手伝っている。今回は東京にも拠点を設けるために出張したとのこと。コロナ禍で東京出張は2年半ぶりだそうだ。北海道土産に「わかさいも」とチョコレートを頂く。

4月某日
「老人支配国家 日本の危機」(エマニュエル・トッド 文春新書 2021年11月)を読む。エマニュエル・トッドはフランスの歴史人口学者、家族・人類学者である。巻末の歴史家の磯田道史や本郷和人の対談によると日本の歴史人口学者の速水融(1929~2019)の影響を受けたという。独自の歴史観に立脚して注目すべき提案をしている。
・新型コロナの被害が大きかった先進国がすぐに取り組むべきは、将来の安全のために、産業基盤を再構築すべく国家主導で投資を行うこと
・日本にとっての少子化対策は安全保障政策以上の最優先課題
・米国は信頼できる安定勢力ではなくなりつつあり、日本も核保有を検討してもいいのではないか等々である。
ただ現在のウクライナ危機からすると首をかしげざるを得ない提言もある。曰くロシアの対外政策は拡張的ではなく理性的。軍事大国ロシアの存在は、世界の安定に寄与している…など。ロシアのプーチン大統領の言動はとても理性的とは思えないし、ロシアのウクライナ侵攻は世界の安定に脅威を与えていると言わざるを得ないからだ。

4月某日
「日本人の宿題-歴史探偵、平和を謳う」(半藤一利 保阪正康(解説) NHK出版新書 2022年1月)を読む。昨年1月に90歳で亡くなった半藤さんがNHKラジオの「ラジオ深夜便」と「マイあさラジオ」に出演した「語り」をもとに再構成したものに盟友だった保阪が解説を加えている。半藤さんがインタビューに答えて半生を振り返るという体裁なのだが、いやぁー迫力がありますね。戦争末期に母親の実家があった茨城県で米軍機の機銃掃射を受けたこと、母親と妹を茨城県に残して帰った向島で体験した1945年3月10日の東京大空襲、半藤さんの著作でも紹介されている話だが「語り」だけに著作とは違った迫力がある。米軍の空襲からロシア軍のウクライナ侵攻を連想してしまう。国際連盟の非難決議に対して国際連盟を脱退した日本に、安全保障理事会で拒否権を発動したロシアを重ね合わせてしまう。人類は歴史から学ぼうとしないのか、同じ過ちを繰り返しているのではないか。