8月某日
大学時代の同級生と会食。13時30分に京橋の明治屋ビル地下のレストラン「モルチェ」に集合。弁護士をやっている雨宮先生以外はリタイヤ組。もっとも元いすゞ自動車の内海君はイタリヤの会社に呼ばれて年に何回かあちらにいっているらしい。元伊勢丹の岡君は親の介護のため、60歳で退職した。あとは元三鷹市社協の吉原君と私の5人。そういえば、1969年の4.28(4月28日のこと)、内海君や近ちゃん(近藤さん)、島崎君らとデモ見物に行って機動隊に襲われたことがある。内海君と近ちゃんは逃げ遅れて逮捕されてしまった。。確か京橋の近くの宝町あたりだった。内海君にそのことを話すと「俺は銀座の真ん中で捕まったの」と譲らない。吞んで食べて喋っていたら3時間ほどはあっという間に過ぎてしまい、店の人に「そろそろ」と言われてしまった。
8月某日
「インフレ・ニッポン-終わりなき物価高時代の到来」(大塚節雄 日本経済新聞出版 2023年4月)を読む。日本は長くデフレだった。しかし長引くコロナ禍で需要も減ったが供給力も減少した。それに昨年2月のロシアのウクライナ侵攻である。原油や小麦が高騰した。通貨としての円も下落し輸入物価の高騰に拍車をかけた。今年3月に日銀総裁を辞めた黒田氏(それと安倍元首相)は2%の物価上昇を公約したが、任期中は実現できなかった。辞めたとたんに実現されるという皮肉な結果となった。著者の大塚は日本経済新聞社の編集委員で2022年4月の日経新聞電子版に「ウクライナ危機で資源高に根ざす輸入インフレは日銀の想定を超えて進んだ。資源を海外に頼る日本にとって輸入インフレは海外への所得流出を意味し、家計の『所得デフレ』や内需型企業の『収益デフレ』に等しい」と書いている。著者は最後に日本経済に幾つかの提言を行っている。私がもろ手をあげて賛成したいのは提言③の「失われた『賃上げメカニズム』の歯車を回せ」である。私の考えでは、毎年3~5%の賃金上昇、それを0.5~1%下回る物価上昇、これがあれば日本経済はうまく回るはず。
8月某日
御徒町駅近くの清瀧上野2号店でデザイナーの土方さん、HCM社の大橋さん、年友企画の石津さんと会食。土方さんから佃煮、石津さんからお煎餅などのお土産をいただく。土方さんとの出会いは10数年前。土方さんが開発した「胃ろう吸引シミュレーター」の販売を巡ってだった。販売を当社が引き受けたのだが、専任の営業を置くことができずに伸び悩んでいた。そんなときにHCM社が販売を引き受けてくれた。土方さんと大橋さんとはそれ以来、仲良くさせてもらっている。こうした呑み会の場合、お互いの近況報告がメインとなるが、年金生活者の私はもっぱら聞き役。土方さんにご馳走になる。
8月某日
「白鶴亮翅」(多和田葉子 朝日新聞出版 2023年5月)を読む。タイトルの白鶴亮翅は「はっかくりょうし」と読み、太極拳のポーズのひとつ。「鶴が右の翼を斜め後ろに広げるように動かして、後ろから襲ってくる敵をはねかえす」ポーズのようだ。物語は現代のベルリンが舞台。夫のドイツ留学についてきたミサとミサを巡るベルリンの友人たちを巡る物語だ。留学を終えて夫は帰国するがミサはベルリンに残る。ミサは隣人のMの誘いで太極拳を習い始める。多和田葉子も確かドイツ在住だから作者のドイツ体験が物語の底流にあるのは確かだ。ドイツでドイツの歴史を体感し、また日本の歴史を想う-それも自然な形で。
なかなか素敵な物語として私は読んだ。