6月某日
図書館から借りた「〈愛国心〉に気をつけろ!」(鈴木邦男 岩波ブックレット 16年6月)を読む。鈴木邦男は新右翼の論客として知られるが左翼とも幅広い交流のある人だ。第1次早大闘争の指導者の一人でのちにニュースキャスターもやった彦由さんの「偲ぶ会」でも見かけたような記憶がある。私はこの会社に入社する前、新橋にあった「日本プレハブ新聞社」という業界紙で記者をしていたのだが西新橋の印刷屋で刷っていて、そこで何回か鈴木さんを見かけた。彼は代表を務めていた新右翼の団体「一水会」の機関紙「レコンキスタ」の校正に来ていたのだと思う。新右翼の闘士とは思えない穏やかな人柄を見たような覚えがある。
本書の内容は極めて真面目なものだと思う。学生時代から愛国的な運動に関わってきた著者が最近の我が国の排外主義的な風潮、例えばヘイトスピーチデモや憲法改正論議、集団的自衛権の問題について丁寧に自分の意見を述べている。この人は民主主義的なナショナリストだと思うし、韓国や中国に対しての対し方を見ても平和主義者であることが分かる。ナショナリズムと全体主義(ファシズム)は本来、別物であり区別しなければならないことがよくわかる。英国の国民投票でEU離脱派が残留派に勝利したが、私は離脱派に排外主義的な傾向を感じてしまう。日本は折しも参議院議員選挙の真っ最中である。国民は白けきっている。そうした中で与党の自公が勝利してしまうのだろうか。
6月某日
アベノミクスを一貫して批判してきた同志社大学の浜矩子教授が「アホノミクス完全崩壊に備えよ」(角川新書 2016年6月)を上梓していたので早速購入。アベノミクスは私の理解では金融を異次元に緩和させ円安を招き、輸出を増大させ株式市場を活性化させるという戦略のようだ。英国の国民投票でEUの離脱が決まったが日米欧の市場は株安と円高で応じた。「どうするアベノミクス!」とヤジを飛ばしたいところである。それはさておき浜教授は「経済活動は三つの三角形」と考えている。第一の捉え方は三角形の三辺を「成長・競争・分配」、第二の捉え方は「地球・国家・地域」、第三の捉え方は「ヒト・モノ・カネ」となる。経済活動は常に均衡を追求するとすれば、三角形の最も均衡のとれた状態、すなわち正三角形である。しかし経済活動は生き物である。場合によっては一定方向に大きく変形してしまう場合がある。そのようなときが政策の出番のはずなのだが、今は政策が三角形の形を崩すことに専念している。成長と競争と分配の三角形ではむやみやたらと成長と競争の二辺を伸ばそうとし、その結果分配がすっかり縮小してしまっている。三つの経済活動がどんどん均衡を失ってゆけば行き着く先は恐慌である。その時期はもしかしたら黒田日銀の国債保有高がGDPの規模を上回る2018年と予想する。その時期は英国がEUを離脱する2年後とも符合する。怖いですねぇ。
6月某日
雨宮弁護士と会社近くの「跳人」へ。雨宮君は大学の同級生。私たちの政経学部は確か29クラスあって第2外国語によって組み分けされていた。29組はロシア語クラス。クラスは「大学は勉強するところ」派と日本共産党を支持する「民青派」と私たち「いい加減な新左翼シンパ」に三つに分かれていた。クラス委員選挙では「大学は勉強するところ派」と「民青派」が結び、私たち「いい加減な新左翼シンパ」はいつも惨敗していた。雨宮君は第一生命に内定していたが、それを断り司法試験に挑戦、めでたく合格して検事に任官、30代半ばで弁護士に転じた。友人としてありがたいのは医者と弁護士。雨宮君は顧問弁護士には聞きづらいことも相談に乗ってくれる。
6月某日
以前、当社に在籍していた浜尾さんが北極の取材から帰ってきたので社保研ティラーレの佐藤社長と吉高さんと企画を進めている書籍の打合せ。北極の取材はシロクマとセイウチの撮影だったそうだ。夜は全住協(全国年金住宅融資法人協会)の加島常務と全協(年金福祉協会全国協議会)の桜井さんと西新橋の「花半」へ。加島さんは旧年金福祉事業団に長く勤めたあと全住協へ。桜井さんは東京生命から全協へ出向、東京生命の破たん後、明治生命の嘱託として全協で団体信用生命保険事務に携わってきた。加島さんは鹿児島県の鬼界が島出身で日大の造園学科に進む。事業団では最初、施設部でグリーンピアの建設で現場に張り付いていた。昔話に花が咲いた。