6月某日
「女たちは二度遊ぶ」(吉田修一 角川文庫 2009年2月)を読む。単行本は06年3月に角川書店から出版されている。吉田は1968年長崎市生まれ。97年に作家デビュー、02年に「パレード」で山本周五郎賞、同年発表の「パーク・ライフ」で芥川賞受賞。昨年映画化され、吉澤亮が主演男優賞をとった「国宝」の原作者でもある。「女たちは二度遊ぶ」は吉田にとっては比較的初期の作品。「どしゃぶりの女」「殺したい女」「自己破産の女」など11人の女性を描く短編集である。私はこれらの物語は基本的にフィクションと思うが、それでも吉田の体験が多少でももとになっているとも思う。授業にも就職活動にも身の入らなかった学生時代、何者でもないという不安定さと何者かになれるかも知れないという栄光。まぁ若さとバカさは紙一重でもある。
6月某日
「日本の後宮-女性と天皇たちの古代史」(遠藤みどり 中公新書 2025年8月)を読む。現代の日本では現天皇の後継男子が弟の秋篠宮とその男子に限られ、皇統を維持するために結婚した女性皇族にも皇族の地位を認めるとか、旧皇族の男子を養子とするなどの
案が出て来ている。しかし、天皇家に一夫一婦制が適用されたのは昭和に入ってからで、大正天皇も明治天皇も正妻というか皇后からは生れていない。本書で書かれているように天皇家には後宮があり、天皇の複数の妻がいた。天武天皇のときに皇后-妃-夫人-嬪(ひん)というキサキの序列が生まれたという。平安時代には女御、更衣というキサキもあらわれた。源氏物語冒頭の「女御更衣あまたさぶらいたまいけるなかに…」の女御更衣である。長い人類史上、一夫一婦制が定着したのは最近のことと言ってよい。ヨーロッパではキリスト教の普及以降、一夫一婦制が定着したが愛人が複数いた国王も珍しくない。日本の場合、皇統を持続させるという目的で複数の妻そして後宮が存在した。さて皇統を持続させるために天皇家に複数の妻、後宮を認めるのは現実的ではない。私は女性天皇を認める、つまり次期天皇を愛子天皇にすべきと思う。
6月某日
「一度読んだら絶対に忘れない金利の教科書」(中島上智 SBクリエイティブ 2026年4月)を読む。金利の仕組みをシンプルに理解するには「日銀の視点」で読み解くことというのが本書のポイント。しかしそうなったのはそう古い話ではなく「バブル崩壊」が機となったという。1980年代後半から1990年代初めにかけて株や不動産の価格が異常なペースで上昇した。これがバブルだ。バブル崩壊後の1990年代からは「デフレ時代の入口に差し掛かった状況」がつい最近まで続いていた。「失われた30年」とか「失われた40年」という奴だ。バブル崩壊後の1998年に新しい日本銀行法が施行された。ポイントは「日銀を政府から独立した組織とすること」「物価の安定を新たに目標に追加すること」の2つ。物価の安定とは具体的には年率2%前後か。バブル崩壊後、長く日本の物価は前年比で横ばい乃至は1%程度の上昇、ときには前年比でマイナスという状態が続いていた。日銀は政策金利(コールレート)を1%ないし0%に引き下げ、政府、財務省も財政を拡大した。アベノミクスの時代である。しかし円安が続き輸入物価が上昇し、原油価格や原材料価格が上昇しはじめ、企業収益も改善し始めた。景気の維持には日銀や政府のコントロールは欠かせない。しかし私が強く思ったのはそれと同時に国民がこれから物価が上がるが給料も上がり、生活はよくなると思うことが重要だということだ。景気の気は気分の気なのだ。今の日本はやっとそういう方向に向いてはきたが、まだ本格的ではないというところか。
6月某日
「百年の挽歌-原発、戦争、美しい村」(青木理 集英社 2026年1月)を読む。平成23(2011)年4月12日、福島県飯館村で102歳の古老が自ら命を絶った。3.11の東日本大震災からおよそ1カ月後のことである。青木は古老、大久保文雄の遺族、とりわけ息子の嫁の美江子を丹念に取材する。文雄の年の離れた弟、久は太平洋戦争末期の昭和19年、20歳で横須賀の海軍に入隊、激戦地の硫黄島へ送られ戦死する。文雄は高度経済成長を支えた原発の事故により緊急避難を強いられ自死した。美江子は後に東京電力を訴え勝訴する。久は無謀な戦争により戦死する。青木は〔「国策」に殺された兄弟〕と表現する。福島県の浜通りは柳美里の小説、ドキュメントにもたびたび登場する。日本人が忘れてはならないモノがあるのだろう。
6月某日
東京駅八重洲口のカンファレンスルームで監事をしている一般社団法人の理事会に出席。14時過ぎには終了してしまった。18時には以前勤めていた会社の社員との会食の予定が神田である。八重洲口から日本橋を通って神田へ。途中、福島県の物産展によって豚丼を食べる。まだ時間があるので千代田区の図書館へ。神田駅で「適当な店で呑んでいてください」のメールが来る。神田駅南口の「町寿司とろたく」で待つ。ほどなく待ち人登場。現役の人は仕事があって大変だ。
